キミのトナリ G ―柊 side― 「柊?」 大好きな人の声を辿って、少し重い瞼を開ける。 さっきまでとは違う温かいお湯の感触に違和感を覚えた。 おぼろげだった意識はすぐにはっきりとして、そんなに時間がかかずに今の状態を理解できた。 「…さくや」 背中に感じる頼もしい身体。 それが誰なのか分かっていても、顔を見ずにいられなくて、後ろへゆっくりと頭の向きを変えながら、そっとその頬へ手を伸ばした。 その手はギュッと握りられ、分かっているかのように触れたい場所へと導かれる。 やっぱり朔弥だ。 触れた温かい感触に安心して、急に泣きたくなってしまう。 「どうした?怖かったか?どっか痛いか?」 朔弥はなんだか慌てた様子で、すごく困ってるみたい。 「泣くなよ…どうしていいか分からねぇ…」 涙が止まらない僕を慰めようと、何度も顔に優しいキスの雨が降る。 普段の朔弥から想像出来ないくらい情けない声に驚きながらも、胸がキュンとなった。 「ゴメン!痛いとかじゃなくて…、朔弥と一緒にいられるのがすごく嬉しくて、幸せで…」 「俺も、すげぇ幸せ。」 腕の力が強くなり、ギュッと強く抱きしめられる。 「お前のこと、好き過ぎておかしくなりそう。」 なって欲しい。 もっともっと朔弥に僕のこと好きになって欲しい。 僕はもうずっと前からそうだよ。 朔弥が好きで好きで大好きで、どうしようもなくて…。 どうしたら、もっとこの気持ちを伝えられるんだろう? 「…好きだ。」 大好きな優しい瞳。 甘い言葉と一緒に、今度は唇に長くて深いキスをくれる。 あまりに幸せ過ぎて、止まったはずの涙がまた頬を濡らした。 [前へ][次へ] [戻る] |