キミのトナリ
D
朔弥が帰った後の教室は悲鳴と歓喜の嵐。
「ヤベー超恐え。」
「なんか背中に黒いものが見えた気がする…。」
「霧島に逆らうは絶対やめよう」
さっきの恐怖を言い合う男子とは対照的に…。
「キャー!超カッコイイ!!」
「クールな感じがまたいいよねー!」
朔弥の魅力を口々に語り出す女子。
女の子って…強い。
僕はといえば…。
あれから1mmも動けない。
奇跡が起きた…。
なんか…夢…みたいだ。
ずっとずっと会えなくて、もう忘れるはずだったのに…。
押さえ込んでいた思いが一気に溢れ出す。
さっきからドキドキが止まらない。
まさかこんなに近付けるなんて…。
うれしい!嬉しくて、幸せすぎて泣きそう。
涙腺が緩みそうになった瞬間、廊下から夏樹が僕を呼ぶ声がして僕は慌てて駆け寄った。
学校の帰り道、僕はかなりの興奮状態でさっき起きた奇跡みたいな出来事を話す。
「こんな柊初めて見た。」
「僕も何が何だか分からない。明日もまた会えるんだよ!もう、どうすればいいの?」
「アハハハ」
動揺しまくりの僕をからかうように夏樹が笑う。
「もう!真剣に悩んでるのに。」
「わりぃ。かわいくてつい。なんか恋する乙女だな」
だから、かわいいって言われても嬉しくないよ。
それに…乙女って…。
「よし。明日からあいつを惚れさせるように頑張らねぇとな」
「えぇー!!むっ無理だよそんなの。」
「大丈夫だよ!何てったって百戦練磨の夏樹様がついてんだから」
そう夏樹は自信満々に答えるけど…
正直僕はそこまで望んでいない。
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