キミのトナリ
D
―朔弥 side―
理由も分からないまま何も疑わずに自分のせいだと思い込んで、泣きながら「嫌いにならないで」と必死に訴える柊。
その姿が切なくて、何より愛しくて、そうさせているのは俺だと思うだけで、心底嬉しくなる。
辺りは日が落ちて薄暗くなったとはいえ、人通りもある場所。
普段は必要以上に人の目を気にする柊が、こんなにも感情的に、必死に俺を求めていることに、心臓がブルッと震えるほど感動していた。
きっとこんな感動は、柊からしか与えられない。
たまらず細い腕を引き寄せ、自分の胸に招き入れる。
想いのままぎゅっと強く抱きしめると、満足感で満たされていく感覚がした。
こんな簡単なことで満足出来るなら、なぜしなかったんだと今更ながら呆れるが、そうしかったは、単に機嫌が悪かっただけでなく、こんな柊を見たかったからなのかもしれない。
それでも、泣かせたのは俺だという事実に、胸が痛まないわけじゃない。
「…ったく、ガキだな。」
そう、兄貴が言った通り俺はいつまで経ってもバカなガキで、その証拠につまらない嫉妬で2度も柊を泣かせている。
「…っ…ごめ…。」
「お前じゃなくて、俺。」
「…えっ?」
「だから、つまらない嫉妬でお前を泣かせてる俺がバカなガキだっつってんの。」
自分で言いながらイラついて、あからさまに態度に出てしまったことにまた呆れ、頭を抱えてため息を漏らした。
「嫉妬!?…えっ?何で?」
俺の言葉の意味が理解出来ないらしく、柊が混乱してる。
まぁ、泣き止んだみたいだからいいや。
やっぱり柊の悲しい顔は見たくない。
ってか、俺すげぇ矛盾してんな。
「分かるまで教えてやるよ。」
そう悪魔のように囁くと、天使のように可愛い柊の唇に優しくキスを落とした。
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