青蓮SideStory
15
一緒に来ているのに放置して先にいくのもなんだと、手水舎から30mほど離れた場所であの2人が我に返るのを待つことにする。
立場も考え方も違うとは言え、相川に食って掛かる佐藤の気持ちを理解出来なくもないが。
男同士で何故そこまでオープンに出来るんだと、呆れ半分、感嘆半分で未だ人目を集め続けている同行者達を待っていると。
「鈍感な春樹もそうだけど、佐藤の鉄面皮さ加減には毎度驚かされるよね?」
どうやら思っている事が全て顔に出ていたようで、くすりと笑った智史にそう同意された。
実際そうなのだ。
相川は一時的に周りが見えなくなっているだけで、普段は人一倍他人の目が気になるタイプなのに対し。
佐藤の場合は無駄に注目を集めている事も理解したうえで、尚且つその好奇心を煽る様な行動に出る事が多い。
現に今だって。
「はぁ…っ、仲直りのキス……か、アレは」
「そうみたいだねぇ?」
ざわりとどよめく傍観者達を物ともせず、普段と変わらぬ態度で恋人を引き寄せた佐藤は確信犯としか言いようがないだろう。
口付ける前に一瞬こちらに目を向けた事から考えても、離れた場所にいる俺達への影響が最小に留まるのを承知の上での行動に違いない。
苦虫を噛み潰したような表情で目を逸らした俺がおかしかったのか、智史はくすくすと笑い続けた。
「そう言えば、シンは手洗ったのか?」
暫くして笑いの収まった様子の智史が、そう問いかけてくる。
「まぁ、一応はな?」
違う宗派とは言えど、聖域と言われる場所に立ち入る際は身を清めるのが筋だろう。
そう返答した俺に智史はふぅんと小さく呟いた後。
「実は春樹の解釈って、当たらずとも遠からずなんだよね?」
「……どういう意味だ?」
「自分の元へ無事に帰って来る……浮気予防祈願みたいな感じ?
そうじゃなきゃ、こんな山奥にわざわざカップルが来る訳ないだろ?」
「………」
「春樹の期待に答えるべく折角遠出したんだから、それくらいの恩恵がなくちゃね〜〜?」
作戦成功と言わんばかりににっこりと微笑んだ智史に、上手く言い返す言葉が見つからなかった俺は。
苦し紛れに小さく舌打ちして黙り込む。
未だにコイツは俺が押しに弱いと思い込んでいて。
自分の時がそうだったからと言って、俺が強引に言い寄られれば誰でも相手にするとでも言うのだろうか?
智史の時は長い禁欲生活の影響も多大にあって。
確かに欲に流されたのは否定しないが、今はそこまで飢えてない……なんて反論すれば。
それならとばかりに、智史が今まで以上に寮監室に居座るのは間違いなかった。
【To be continued】
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