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ショート
連想の形(仙流)
「なぁ、この写真って何?」
アルバムを見ていた仙道に訊かれて、流川は横から覗いた。
一枚は色々落書きされた黒板が一面に写っていて、もう一枚はその一部がズームになっている。
暫く記憶を辿っていた流川は、やがてボソッと答えた。

「……卒業式……みんなでって書かされた」

クラスメイトが撮ったのを送ってくれたのだが、放置したまま忘れていたのを、恐らく母親が見つけてアルバムに入れておいたのだろう。

「じゃあこの絵がおめぇのか?」
ムスッとしたまま否定をしないので、そうなのだと思われる。

「これ……怪獣?」
決して上手いとは言えないが、何だかほんわーとした感じだ。
「ちげー……ペンギンだ」
「ペンギン?じゃあこの頭のギザギザは?」

「………………トサカ」

仙道は考え込んでしまった。
自分も詳しくはないが、トサカのあるペンギンなんて居ただろうか?
そんな仙道を見て、流川は仕方なさそうに付け加えた。

「ガキの頃、テレビで見た。氷で滑って…だったか……横に頭刺さってた」
暫く考えた仙道は、薄っすらと思い出した。

「………あぁ、そーいやそんなCMあったな、アニメーションの」
仙道もうろ覚えだが、今思えば確か整髪料か何かのだった。

「よくそんなの憶えてたな。何でそれを描こうと思ったんだ?」
勿論あのアニメとは全く違う絵なのだが。

「………………」
流川は黙り込んでしまう。
まぁ無理に聞き出す程の問題でもないのでそれ以上追求しないでいたら、流川が突然仙道の前髪をくしゃりと引っ張った。

「…………何となく……思い出したから……」
「……そっか……」

流川の手を髪から外して、その指にそっと口づける。
そうしたら流川の方から手を引っ込められてしまった。

するとニコニコ笑って仙道が訊いた。
「オレのイメージってペンギンなのか?」
暫く彼を見つめていた流川は溜め息をつく。

「アンタはそんなかわいーモンじゃねー。やさしそうに見えても猛獣だ」

ちょっと目を見張った仙道は、ふんわりと微笑った。
「おめぇも猫科の猛獣かな、そーすると」

見た目は狐っぽいのかも知れないが、犬科の性格ではないと仙道は思う。
否、一途な所は犬科か?なんて考えながらも流川を背中から抱きしめて言った。

「他の奴等には狐って思わせておけな?」
「知らねー、どーでもいー」
そう言い切ってから追加する。
「オレはオレだ」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、顎を持ち上げられて唇を塞がれた。

「……好きだぜ、流川」


オレも、なんて言わなくても、また合わさった唇が、甘い吐息に変わった。




───────おしまい。

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