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ショート
昔話(平新)
「ただいまー」
平次はバックを部屋に置いて、シャワーを浴びた。
パジャマの下だけを履いた姿で、ベッドルームの小さい冷蔵庫から水を出して飲み干す。

「お帰り、京都どうだった」
ベッドに寝転がって本を読んでいた新一が顔を向けると、平次は応えた。
「勿論解決してきたで」
そうして新一が空けてくれたダブルベッドのスペースに潜り込む。


「あぁ、そーいや山能寺の坊さんに偶然会うたわ」
新一は平次をじっと見つめる。
「……やっぱ初恋は忘れらんねーか…」
苦笑する新一に、平次は首を横に振った。

「ちゃうで、あれはもうええねん。それに山能寺に行ったんちゃうし」

確かに初恋は綺麗な思い出になると言うが、あの少女の正体があまりに近くに居る人間だった為、思い出ではなくなってしまい、同時に未練もなくなった。

「ちょお喋って、そしたら何や住職が不思議な事言うてたん思い出したとか言うてな」
「不思議な事?」

「坊さんには誤魔化したったけど、どーやらあの住職、小っさかったおまえとオレを、義経と弁慶みたいや思うてたらしいで……やっぱり食えへんジィさんや」

「義経と弁慶ねぇ……もしオレが義経だったら、歴史変わっちまうだろ」
「もっと違うやり方があったて?」
「…いや、それはどーか判んねーけど。時代背景だって今とは違うしな」

平次は黙って新一の次の言葉を待った。
すると新一は照れたみたいに目を逸らした。


「…………弁慶がおまえだったら、義経と弁慶がデキてた事になっちまうじゃねーか……その前に子供作ってなきゃ義経の子孫はねーぞ」

平次は驚いた様に目を見開いた。
そしてそれから照れ臭そうに微笑う。

「そやな……おまえと出逢うてもーたら、テッパンで離されへんわ」
平次は新一をぎゅっと抱きしめた。

「オレ達は、工藤新一と服部平次で充分だ」

ぼそっと言い捨てる新一の頬に手をあてて、平次は彼に口づけた。

「…工藤新一は、服部平次のもんやで」

そう言って新一の首筋にキスを落としながら、パジャマの釦を外していった。
はだけた胸を舌で愛撫してくる平次の頭を抱いて、新一が応えた。
「おまえもな……」
他の誰にも渡さない。

そうして互いが互いのものになるべく、深く深くまぐわった。


淫らな甘い声を上げる新一の濡れた唇を塞いで、互いに貪り合う。
あまり離れない体位でぴったりと抱きしめ合って、喘ぎ声と熱い息と結合音が部屋に響いた。

「……新一……新一…っ……」
「ん……あぅ……平…次…ィ……あっ……」

互いの名を呼び合いながら、快楽の中で二人は昇天したのだった。

そしてトロンとした瞳の新一の髪を撫でて、もう一度口づける。
躰を蠢かせる平次に腰の動きを合わせながら、ふんわりと開いた淫らな唇がそっと強請った。

「………もっと………」

平次は淫らに微笑んで、新一の希望を叶えた。


そうして二人、気持ち好く深い眠りに入っていった時も、互いを抱きしめていたらしい。


そんな鴛鴦夫夫のとある小さな出来事は、やはりラブラブに収まった様である。



───────おしまい。

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あきゅろす。
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