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精霊輪舞〜姫君見聞録〜
〜五滴 再会姫君〜



王女は再会を果たす。



だが、それは同時に、新たな道への出会いでもあった。







「〜五滴 再会姫君〜」






二人の王女と二人の男が出会ったローライズ峠の中腹に、一人の少女の姿があった。


彼女こそ、二人の王女の片割れ、第二王女ルディア。

相当の手練れを思わせる見事な気配の消し方で、その広場となっている場所を眺めた。
金の髪が滝のように揺れて、それだけが彼女の気配を表している。

視線の先には、黒髪の青年。
先ほど彼女が出会った青年の片割れだった。

ジークと名乗った彼は、手持ち無沙汰そうに辺りを見回していた。


「近い?」

ルディアが相変わらず気配を消して、傍らの存在に語りかけた。

一瞬の冷たい空気とともに現れたのは、水色の女性。
人ならざる神々しさを持つ彼女は、水精霊の王、スィリーセイ。

『えぇ。雷の気配を持つのは彼ではないようだけど、確かに近くあなたのお姉様の気配を感じるわ』

微かに閉じかかった水色の瞳は確かに陰っていた。
耳を澄ます仕草をしたあと、徐にルディアへと向き直る。

『本当にやるの?』

まるで子供を諭す親のように、心配そうな瞳でルディアに何度目かの同じ質問をした。

「何度言わせるの。アリアスは私の双子の姉。危機が迫ると分かれば、助けるのが道理。私も、もう昔ほど弱くはないわ」

意志の強い瞳。
彼女の双子の姉、第一王女アリアスとは、趣の違う確かな品格。
スィリーセイは、やはり何度目になるかの制止をあきらめた。

『分かったわ。それじゃあ、いきましょう』








手持ち無沙汰の様子だった青年、ジークは、自分の目が届く範囲にいる少女を、その目で捉えた。

金髪に、簡素だが品の良い衣装。

何故いままで気が付かなかったのか。
彼自身、気配には敏感な筈で、王女として育ったであろうあの少女に、そんな気配を消す技術があるとは思いがたかった。
それも自分が簡単に気づかないほどの技術。

最初に彼女らに興味を持ったのは彼の相方だったが、自分も妙に気になり始めた。
しばし、あの王女が何をしだすのか、確かめて見る気になった。









「行くよ。スィリーセイ」

『いつでも構いませんわ。我が契約王ルディア』

ルディアはその一言に全霊をかける。
彼女が発動するべき力は、三つ。

まずは青年ジークを捕らえる為の力、そしてもう一人が従えているであろう雷を封じる力、最後にたった一人の双子の姉アリアスを救い出す力。

本来の用途ではない水精霊の能力と、咄嗟に協力を要請した緑精霊、地精霊の能力。

その三つの精霊力をトラップとして特定の位置に塊として設置する。
順番にその力を解いて行くのだ。

契約した精霊種以外の力を使うのはかなり辛い。
普通ならば少し力を借りるだけだが、今回はそれを駆使するのだ。

契約士に与えられた《神言葉》を使って。

「我は、水精霊王 スィリーセイと契約せし者。人々の癒したる存在、時に生かし、時に殺しもする、穏やかなる緑の力、今、我に貸し与えたまえ!我が名は、水王 ルディア!」

最初は緑精霊の力。
周囲の木々達から分けられたその力を、捕縛の為に使う。

設置された塊はジークが移動する範囲。

しばらくは、精霊力の操作が必要だ。

『ルディア、大丈夫?』

「大、丈夫!」

額に浮かんだ汗を、スィリーセイが精霊力で乾かす。

礼を言うのも忘れて、ルディアは青年の様子を伺いながら、その腕を動かした。





「まさか、こんな手で来るなんてな……!」

突如地面から盛り上がった草木。
自分の捕縛を目的に動いているようだ。

捕まらないように体を捻り、縦横無尽に掛けるそれを避け続ける。

一度、手足を取られれば終わりだろう。
左右、上下、前後、すべてに気を配り、緑精霊の力であろうそれを、小刀で切り落とした。

確かに緑精霊の力は捕縛にも使えるが、滅多にやらない。
争い嫌いの緑精霊がそう力を貸してはくれないのだ。

楽しそうに笑いながら、ジークはただ避けた。

「やるじゃねぇか……!王女さんよぉ!」







『ルディア。そろそろ次を』
「うん……!」


「我は、水精霊王 スィリーセイと契約せし者。生命の母たる大いなる存在、時に仇なし、時に守る、剛健なる大地の力、その力、我に貸し与えたまえ!我が名は、水王 ルディア!!!」

続いて発動するのは地精霊のもの。
設置された位置は、相手にバレない程度に、雷精霊力に近い場所。

雷精霊にとって地精霊は苦手とすべき存在だ。
雷精霊の力を牽制するにはお誂え向きの精霊力が地精霊の力と言うわけだ。


『上手く行くかしら』

精霊の力を上手く交信させる役目を担ったスィリーセイが、塊が設置された場所へと目を向けた。

「上手く、行かせる……!」






設置された精霊力の塊は、確実にその力を発動させていた。

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あきゅろす。
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