MAIN 9 「お、おいどこまで行くん…で、すか?」 人気がない特別棟まで連れで来られた。 まだ授業前だから誰もいないみたい。 特別棟は教室ではできない授業とか、専用の機械が置いてある教室とか、取りあえず専門分野が学べる教室とかあって、実験室で密かにミックス墨をつくったりしたね。 はーい! ここでよい子のミックス墨の作り方のしょうかーいです! まずイカ墨とタコ墨を1:1で混ぜます。 それから塩胡椒を少量と嫌がらせでヤモリの血と蛇の抜け殻を粉末にしたものを混ぜます。 これで出来上がり! 簡単でしょ♪さぁ、みんなも作ってみよー! いやーあの時は楽しかった☆ めっちゃ異臭放ってたらしく見回りに来てた警備員が涙を浮かべてたし。 もちもん俺はガスマスク着用だから全然へっちゃらさ! 「…何故敬語?今更。」 「今更言うな…下さい。先輩だし?」 ふはははは! これは作戦だったりするのだ。 敬語を使って優等生を演じておいて相手を油断させると言うナイスアイデアなのだ。 きっと俺の敬語にビビって手を離してくれるに違いない! そしたら持ち前のダッシュで逃げ切ってやる。 世界一有名な土管職人の赤い帽子の親父も驚くくらいのBダッシュでな! わはははは! 「…ふ、お前面白い。そんな敬語じゃビビらない。お前なつに渡すの勿体無い。」 そう言って無口な人は俺の頭をがしがしと撫で回した。 無口の人案外喋るんですね。 「痛っ、俺の大事な髪の毛ハゲちゃう、ハゲちゃうから!…!?ってか、俺の素晴らしすぎる作戦漏れてる!?無口の人なんで!!?」 「…それって俺のこと?全部でてた。りぃー…朔。呼んで?」 「りぃーって俺だよね?どのパターンであだ名呼び!?あれなのか、逆に俺を油断させる作戦なのかっ!!!!」 「?…りぃー馬鹿なの?けど可愛いね。呼んで?」 「う、近いから!そんな迫られても困るんですけどぉ…?」 無口の人がどんどん迫ってきたから自ずと自分も後ずさり。 お陰で背中がピッタンコですよ。 語尾が決まらなかったのはけして朔って人の顔がドアップ過ぎて照れたわけでないよね。 うん、きっとそう。 別に俺同性に興味ないのに何だろうこの 心臓のバクバク感!?初めて恋した感じ!!!? ……いやいや可笑しいでしょ。俺は巨乳でおしとやかで、優しい笑みを浮かべるさちこちゃんみたいのがタイプだ。 落ち着け俺! もう編入して随分たって今更男子校マジックにかかるとか可笑しくない!? 「…落ち着いて。俺の顔好きなの?」 「だ、だから近いって!いででで、俺そ、そ、そんなこと言ってない、もん。」 何を考えたのかこの人俺の顎を指で掴んでクイッと自分の方に向けさせた。 自動的に身長差のせいで首が可愛そうなくらいピンッと張っちゃったけどね。 悠長に言ってるけどこれ結構痛いんだけど。まぢで痛いんだけど。 因みにもんとか語尾で言ったのは気にしないで置こう。 「ねぇ、早く。」 もげちゃうよ!何か大事な物がもげちゃうよ! 「いだだだっ!わかったよ。は、はじめ。」 名前を呼んだらようやく手を離してくれた。 ふぅー…顎が自由になったよ。 ちゃんと首つながってるよね? 「ん、いい子。りぃーさちこって誰?」 イヤーンそこは忘れてよね!? そりゃー若かりしときの思いでだよ。 でもさ、でもさ! わーんなんでさちこちゃんあんなゴリラみたいな毛むくじゃら先公と結婚したんだよー! 俺は認めないからねー! [*前へ][次へ#] [戻る] |