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立海大
ある日森の中で/丸井ブン太



『あるぅ日〜森の中〜♪』


今日はここ
そう、歌詞を見ても分かるように森に来ています

…森といっても学校の裏山なんだけど


学校の昼食をとる時、必ず外に出るのが私の日課
勿論誰にもばれないように

今は弁当を食べ終え、チャイムが鳴るまでここで休むつもり
草村に座り、誰もが知る童謡を歌っていた
やっぱ森といったらこれでしょ


『くまs…「ブンちゃんに〜出会った〜♪…なんて、どうだよぃ?」


え・・・?


振り返ると目の前に見える
明るい赤い髪
可愛いらしい顔つき
男らしい、でも優しく弾んだ声
全てどこか見覚えのある容姿だ


『丸井…ブン、太?』


「せーっかい♪」


そう嬉しそうに言いながら
彼…丸井くんはこっちに来た


丸井ブン太…
立海テニス部レギュラーの誰もが知る皆の人気者
私も最近その名を知った
クラスメイトでもないし話したことすらない
何でそんな丸井くんが…?

そう思い、もう一度よく丸井くんを見ると


『…っ!止まって!』

「およっ!?な何だよぃ!?」

『…下』

「へ?下ぁ?…あ、花」


そう、丸井くんがあと一歩踏み出したら花が踏み潰される所だったのだ


『花がね、助けて〜って言ってたの。気をつけてね』
「お、おぅ。悪りぃ」


そう言い、次は慎重な足付きで私の隣に座った
そしてこっちを見て口を開いた



「なぁ…ひとつ聞いていい?」

『え?うん、いいよ』

「いっつもここで飯食ってんの?」


『ううん。
昨日は中庭のベンチ
一昨日はそこの浜辺』

「な、何で…?」

『ひとつだけ、じゃなかったっけ?』

「まぁ…でも気になるじゃん!」


まぁ確かに気になるよね。
でも、でも・・・


『じゃあさ、私もひとつだけ聞いていい?』


「お、おう。何だよぃ?」

『何でここに来たの?』

「あちゃ〜直球だな」

『だって…初めてだから』


皆不思議がるけど、誰も私に近づこうなんかしなかった
私も必要以上に関わろうとしなかった


すると丸井くんは少し悩んだそぶりを見せてから、こう答えた


「うーん、分かんね。」

『…は?』

「俺も分かんね。たまたまコソコソ裏山向かうお前見てよ、気づけば追いかけて来てた」

何よ、それ。

「お前さ、いっつも外見つめてるじゃん?昼はいなくなるしよ。お前の世界が気になったんだよぃ」


そんなこと言われたの初めて。

『…私はね自然が大好きなの。
自然の声が聞こえる。
風に呼ばれて出かける度に毎日違う出会いがあるの。
それが楽しくて。
同じ景色なんてないじゃない?

ほら…例えばさ、今日は丸井くんに会えた』


そう言い終えたとき
遠くでチャイムの音がした

『あ、そろそろ帰らなきゃ怒られちゃうよ。迷うから後ついて来て?』


そう立ち上がり歩きだした。
誰かにこんな事話すのは初めて
おかしいっ思われたよね
でも、何故だろう…
急に聞いてほしくなった


歩き出してすぐ、黙り込んでた丸井くんが急に


「お嬢さんお待ちなさい。
ちょっと落とし物…だったっけな?」


なんて言うもんだから振り向くと
さっき踏みそうだった花を持って


「俺にはこう聞こえた。
"私を積みとって、紗良ちゃんに渡しなさい"
ってな!」


そうニカッと笑って私に差し出した


『…っばぁか。痛いって言ってるよ』


そう言う私の顔は涙でグチャグチャで。

花の真似の高い声が可愛いだとか
名前知ってたんだとか
馬鹿にしないんだとか
いろんな気持ちが込み上げて
ただ、泣くしかなかった。

貰った花を決して離さずに、私は、最高の笑顔を向けた。



ある日森の中で
 
 
(ブンちゃんに)
(出会った)

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