16
放課後、モサ野郎が来るまで帰りの身支度をする。途中、何度かクラスメイトに挨拶を交わしながら、せっせと済ませる。
「あ、悠斗ー!!一緒に帰ろう。」
前扉からこっちを見ながらブンブン手を振っている。教室に残っていた数名のクラスメイトが不信な顔しながらも、立ち去る俺に挨拶を交わす。
「悠斗、今日なに食べたい?」
突然聞かれても食べたいものなんて浮かんでこない。けど言わないとしつこいから、適当にハンバーグと答える。
「ハンバーグか…よしっ!行ったん寮に戻ってそれから買い物に行こう。」
「分かりました。」
寮へ着き「ロビーで集合なっ!」と、言う言葉を聞いて自室へ戻る。制服から私服へ着替え、貴重品をズボンのポケットに入れてロビーへ向かう。モサ野郎より先に来た俺は置いてある本を一冊手に取り、近くのソファーで暫く読書をする。
やけに遅いな……
そう思い時計を見ようと本から目を離すと、俺をじっと眺めているモサ野郎が向かいのソファーに座っていた。
「来たのなら声かけてくださいよ。」
「本に集中しているからジャマしちゃ悪いかなーって…」
暇つぶしに読んでたから、別に気を使わなくても良かったのにな。
「じゃあ、行こっか。」
手を差し伸べられる。
どうしろというのだろうか?
ジッと差し出された手を見つめると手を継がれる。
「はぐれないようにしっかり握っててね?」
いやいや、はぐれませんから。
握られた手は離される気配もなく、そのままショッピング街へと連行される。すれ違う人は皆珍しそうに此方を見ていて、すっごく恥ずかしい気持ちになった。そんな俺とは逆に嬉しそうにするモサ野郎。
「悠斗は嫌いな野菜とかはない?」
「特にはないです。」
よかった。といって食品売り場を回り必要な食材を買う。その後は荷物を手分けして持ち、モサ野郎の部屋へお邪魔する。
「お邪魔します。」
「どうぞ。今からご飯作るからその間、棚にある本とか勝手に読んで待ってて。」
と野菜や肉を袋から取り出して手際よく切っていく。それを横目で見て凄いなと思いながらも、不器用な俺は言葉に甘えて本を読むことにした。
モサ野郎の持っている本は自分と好みが似ていて、知らずのうちに熱中してしまい、あっという間にハンバーグがテーブルの上におかれていた。
「出来たよ。」
「あっ、すいません…」
「いいよ、その本貸すから部屋に戻ったら読んだらいいよ。」
そう言って茶碗に入ったご飯と味噌汁をハンバーグの両端に置いていく。
「じゃあ、食べよう。」
いただきますと手を合わせご飯を片手にハンバーグを頂く。
「……美味しい。」
口の中に肉汁がわっと広がり、ふんわりとした食感がなんともいえない。
「でしょ?悠斗の為に俺、頑張っちゃった。」
ニッコリ笑って俺の食べる姿をじっと見て言う。
「食べないんですか?」
って言うか食べにくいのだが。
「うん。いただきます。」
自分で作ったハンバーグに美味い!と叫んで、その後は俺より早くご飯を平らげるのだった。
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