放課後、モサ野郎が来るまで帰りの身支度をする。途中、何度かクラスメイトに挨拶を交わしながら、せっせと済ませる。 「あ、悠斗ー!!一緒に帰ろう。」 前扉からこっちを見ながらブンブン手を振っている。教室に残っていた数名のクラスメイトが不信な顔しながらも、立ち去る俺に挨拶を交わす。 「悠斗、今日なに食べたい?」 突然聞かれても食べたいものなんて浮かんでこない。けど言わないとしつこいから、適当にハンバーグと答える。 「ハンバーグか…よしっ!行ったん寮に戻ってそれから買い物に行こう。」 「分かりました。」 寮へ着き「ロビーで集合なっ!」と、言う言葉を聞いて自室へ戻る。制服から私服へ着替え、貴重品をズボンのポケットに入れてロビーへ向かう。モサ野郎より先に来た俺は置いてある本を一冊手に取り、近くのソファーで暫く読書をする。 やけに遅いな…… そう思い時計を見ようと本から目を離すと、俺をじっと眺めているモサ野郎が向かいのソファーに座っていた。 「来たのなら声かけてくださいよ。」 「本に集中しているからジャマしちゃ悪いかなーって…」 暇つぶしに読んでたから、別に気を使わなくても良かったのにな。 「じゃあ、行こっか。」 手を差し伸べられる。 どうしろというのだろうか? ジッと差し出された手を見つめると手を継がれる。 「はぐれないようにしっかり握っててね?」 いやいや、はぐれませんから。 握られた手は離される気配もなく、そのままショッピング街へと連行される。すれ違う人は皆珍しそうに此方を見ていて、すっごく恥ずかしい気持ちになった。そんな俺とは逆に嬉しそうにするモサ野郎。 「悠斗は嫌いな野菜とかはない?」 「特にはないです。」 よかった。といって食品売り場を回り必要な食材を買う。その後は荷物を手分けして持ち、モサ野郎の部屋へお邪魔する。 「お邪魔します。」 「どうぞ。今からご飯作るからその間、棚にある本とか勝手に読んで待ってて。」 と野菜や肉を袋から取り出して手際よく切っていく。それを横目で見て凄いなと思いながらも、不器用な俺は言葉に甘えて本を読むことにした。 モサ野郎の持っている本は自分と好みが似ていて、知らずのうちに熱中してしまい、あっという間にハンバーグがテーブルの上におかれていた。 「出来たよ。」 「あっ、すいません…」 「いいよ、その本貸すから部屋に戻ったら読んだらいいよ。」 そう言って茶碗に入ったご飯と味噌汁をハンバーグの両端に置いていく。 「じゃあ、食べよう。」 いただきますと手を合わせご飯を片手にハンバーグを頂く。 「……美味しい。」 口の中に肉汁がわっと広がり、ふんわりとした食感がなんともいえない。 「でしょ?悠斗の為に俺、頑張っちゃった。」 ニッコリ笑って俺の食べる姿をじっと見て言う。 「食べないんですか?」 って言うか食べにくいのだが。 「うん。いただきます。」 自分で作ったハンバーグに美味い!と叫んで、その後は俺より早くご飯を平らげるのだった。 ≪backnext≫ |