暗闇 ひたすら走った。 ただ走った。 もっと遠くに。 より遠く。 早く、早く、早く! 僕は足も遅いから早くしないと追いつかれてしまう。 だけど、足が止まった。 心臓がバクバク壊れそうで、肩で息をしないと死んでしまいそうだった。 それに気がついた。 追ってくるわけ、ないじゃないか。 「ハハ…………馬鹿みたい」 ポツリとこぼれた言葉。 もう僕はいらないんだから。 分かっていたことだけど、悲しくてまた泣いてしまった。 しばらく蹲っていたけれど、もう少し遠くに行きたかった。 立ち上がった時、不意に腕を掴まれた。 ドキっとした。 もう見つかったのか、と。 見つかってはいけないのに。 来るわけないのに、諦めていたけど、嬉しいとも思う。 馬鹿みたいに、期待してしまった。 だけど見上げた先は知らない人。 「ねぇ、どうしたの?」 低い大人の男の人の声。 見た目はちょっと怖そうな人。 「あ、あ、ぁの………」 「こんなところにいたら通行人に迷惑だよ。」 でも言葉は優しかった。 「あ、ごめ、ごめんなさい。」 「まぁ、何かあったみたいだから仕方ないね。 どっかお店、はいろうか?」 笑った顔が穏やかで。 目が……あの人に似ているような気がした。 だから僕は…………・ [*前へ][次へ#] [戻る] |