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月が音を奏でる夜
003
奏音達と合流し、スタッフ専用休憩所まで戻って来た蘭丸。
その間に、掻い摘んで奏音に今日起こった出来事を説明する。

「あー……それ、洗礼、だね」
「洗礼?」

怪訝そうな表情で、奏音を見つめる。

「新人アーティスト潰しの洗礼。……まぁ、それだけ脅威、って事なんだろうけど……やり方、気に入らないなぁ」
「!?」
「で、演奏(や)る楽曲ってどれ?」

さら、と言い放つ言葉に少し驚きながらも、気を取り直して、歌う楽曲名を並べて行く。
奏音はそれらをメモりながら、んー、と言葉を洩らしている。

「ボクは、大丈夫だけど……あの子達はどうだったかな……。ん?あの子達は……もぅっ!」

こちらをちらちら見ながら、きゃぴきゃぴ、と話し込んでいる少女4人を睨む奏音の姿が視界を掠めた。
ぴく、と奏音の眉が揺れたかと思いきや。

ダン!

勢い良く、足を踏み鳴らす。
すると、少女達は慌てて、奏音の周りに集まり始める。

「ごめんごめん。怒んないで、スーちゃん」
「――――…楽曲確認して」
「大丈夫ですぅ」
「あたしも大丈夫」
「順番、このまま?」

テーブルに置かれたメモを手に取ると、少女達は頷き合う。

「順番は、そのまま……の筈だが」
「曲は大丈夫そうだね。じゃあ、ボク達がバックバンドやる」

その言葉に、「洗礼やられたんだ」、「あり得ないわよねー。バカみたい」など、個人の感想を述べていく。
QUARTET NIGHTの様なユニットは、バックバンドが居ないと、コンサートが成り立たない。
それ故、バックバンドを探すのだが、他事務所から圧力が掛かる事があるらしい。
それだけそのユニットが脅威である、と言う事なのだろうが、された方はたまったものではない。
バックバンドが見つからなければ、コンサートは中止となり、チケットの返金やキャンセル料で多大な損害を強いられるのだから。

「ランラン!こんな所に居た」
「嶺二!」
「!!」

奏音は、突然聞こえた声に、跳び上がるように驚くと、慌ててカバンの中から何かを取り出し、被っていた。


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