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月が音を奏でる夜
001
あれから、彼女を自宅近くまで送り届けた蘭丸。
その間に、連絡先を手に入れる事が出来た。
それもその筈。
あの出来事を持ち出し、何かあった時に連絡出来るだろう、と半強制的ではあるが、連絡先交換にあたり、彼女を頷かせた。
再び、彼女と出逢うにはこうするより、他に方法がなかった。
がっつき過ぎだな、と自身の行動の感想を思う。

「奏音、か……」

いかにも彼女らしい名前である。
☆♪かな♪☆と表示されたLineを見て、小さく笑う。
これで何時でも、奏音と連絡が取り合える。
そして、奏音の歌を聴く事が出来るのだ。
もし、都合が合えば、デートに誘う事が出来る。

[……何考えてんだ?]

ただ、奏音の歌が聴きたいだけだろ。
なのにデートってなんだよ、デートって!!
自身でそう突っ込む。
けれど、あんな短時間ではなくて、もう少し一緒にいたい、そう思ってしまう。
矛盾し始めた思考に、はぁ、と、小さく溜息を吐き、考えるのを放棄した。

「……ライブが近いから、緊張してんの?」
「……してねぇ」

そんな蘭丸を他所に、同じQUARTET NIGHTのメンバーである寿嶺二が声をかけてきた。
輝夜姫の事を考えていた、などとは言えず、ふぃ、と嶺二から視線を避ける。

「ホント、緊張するよね。単独ライブ」
「してねぇって言ってんだろ」
「はいはい」

今までは、事務所の先輩アーティストの前座として、歌を披露する事が多かったQUARTET NIGHT。
次第に人気も上昇していき、単独ライブをする事となった。
地道に活動してきた結果が今、開花しようとしていた。

「……はー、早く始まんないかな、単独ライブ」
「…お前が緊張してんじゃねぇのか?」
「まあねぇ。でも、ランランは愉しみじゃないの?」
「……」

その言葉に、返事は返さなかった。
騒がしい嶺二に呆れ果てていたのは、言うまでもない。


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