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彩子は部室の鍵を持ってるから、放課後はすぐに部室に行くことになってる。
この時間ならドミも迷わずもう彩子に会えてるんじゃないかなと思うと、あたしはここの居心地の悪さに何だかすっきりしなくて。
涙をぬぐって立ち上がって、ドミが戻って来る気配がする前に移動することにした。
ちょっと待ってろって言われたけど、よくよく考えてみたらあたしはドミに合わせる顔がないわけだ。
泣いてた理由もあの告白も説明するにしても、今のあたしには心の余裕がなさ過ぎていい案が浮かばない。
ドミのことが好きだ、とそれを誤魔化すいい案が思い浮かばない。
だってさ、高校時代から好き合って結婚した人と今一緒なわけでしょ。
そのあいだにあたしが入るなんて馬鹿馬鹿しいし、というか、ドミに恋愛感情を持ってること自体、自分としては笑えもしない冗談みたいで。
あたしとドミはそういう関係じゃないの。
先生と生徒で、憎まれ口をして、彩子の言うとおりたまに容赦ないこと言い合って、ドミがしょうもないことを言ったらツッコミを入れる程度。
このときめくのは、森先生があたしを好きって言うこと以上にあり得ないんだ、とにかく。
あたしはとぼとぼ歩きながら校門へと向かう。
テニス部に顔を出して彩子にてきとーに挨拶して、そしたら教室で文化祭の準備を手伝おうと思って鞄は教室に置きっぱなしだった。
今さら取りに行くこともできない、こんな顔だし。
明日は英語の授業があったように思うけど、和訳は休み時間にやるしかないかな。
世界史の授業はあったっけかな。
って、今まさにドミをほったらかしにしてきてるんだから、気にすべきなのは明日のことじゃなくて今のことのような気もするけど。
(*)backgo(#)
木春菊
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