自分でも分かってた。

 上達しないならさっさと見切りをつけたらいいって。

 この学校が特別テニス部が強いわけでもなくても、活動自体を楽しめないのならさっさと退部しちゃえばいいって。



 うん、あたしも本当は去年の今頃退部するつもりだった。

 彩子が、恵が一緒にいると楽しいからって言ってくれたからあたしはあのとき、顧問に退部届をもらいに行きかけた足をまたテニス部へと向けたんだ。

 彩子がいなかったらさっさと辞めてたテニス部。



 彩子はキャプテンとして輝いていた。

 このあいだの試合で有力選手として出場し、学校としての結果は残念なものだったが、個人戦ではかなりいい成績を残すことができた。

 それ以前に今年の部活初めの抱負を語り合う時間では、大多数の後輩が「彩子先輩のように」と口を揃えて言っていた。

 それを聞いて嫌味に思う同級生もいない。

 彩子が普段どれだけ頑張っているか、そして実力が伴っているか誰もが知っていたからだ。

 中学からテニスをやっていて、一部の子と比べたらまだテニス歴が浅いよ、と自分で言っているくせに指示や指導が的確で、顧問にも信頼されている。



 恵が一緒にいると楽しいと言ってくれた彩子。

 あたしはあのとき同じことを言ってあげることができなかったし、彩子は今でも同じように思ってくれてるのか分からない。



「じゃあこれで部活終わります! 何か連絡ある人は?」



 今辞めるって言っても、彩子はもうあたしを止めないような気がする。

 5メートルの距離が、それを示していた。

(*)backgo(#)

木春菊

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