ギミックボーイ first gimmick * * * * * 俺と慶介は、中学からの付き合いだ。 中1の時に同じクラスになってから、ずっと一緒にいる。 そして当初から思っていたのだが、慶介のヤツはかなりカッコいい。 背が高くて、スポーツより勉強できるって感じで、おっとり系でチャラくないから同級生にモテそうだなーって感じ。 それなりに告白されてきたんだろう。初めて慶介が告白されている現場を見たときには、すでに断ることには慣れている風だった。 「ごめん、好きな人ができたんだよね」ってさ。で、最後にニッコリ笑って「でも……ありがとう」の一言。 うん、手慣れておりますな。 いやいや、そんな振り方したら余計に諦めがつかなくなるんでないの?とか思うけど、そういう話とは無縁の俺には判断の仕様がない。 え、俺?……どーせモテませんよ、ええ。 って、そんな話がしたいんじゃなくて。 ひとつ不思議なことがある。 俺なんかの数百倍はモテる慶介は、中学の3年間、誰とも付き合わなかったのだ。 1人くらいなら付き合ってた人がいてもイイんじゃねーのかとは思ったけど、「好きな人がいるから」の一言で、全員断ってしまったらしい。 勿体無いよなぁ。好きな人が誰なのか聞いたって答えないし。もしや、断る時の口述だったりして。 ったく、いつでもモテるやつは言うことが違うねー、チビ且つガキっぽくてモテない俺には一生吐けない言葉だわーマジで。 っと、そんな摩訶不思議な話も置いといて。 とりあえずそういう事もあり、彼女を作らなかった慶介と作れない俺はずーっと一緒にいた訳だ。 勉強もよく教えてもらってたから、俺だってそれなりにできてた。慶介先生様のおかげで、高校も結構いいところに受かったし。 でも、まさか俺と同じ高校に慶介が来るとは思ってなかったけど。もっと頭いいトコ受けてると思ってたから、そうとわかった時には本当にマジで嬉しかった。高校でぼっちとかマジありえんし。 俺が受けたのが公立では珍しい男子校だったんだけど、取り敢えず青春時代はオンナなんていらねぇってことで、身の丈に合った高校を選んだ結果がそうだった。 だから別にモテないから男子校でもいいやとかそんな事はちょっとも頭をよぎったことはない。断じてないぞ。 で、慶介とはまた3年間よろしくなーっということになったわけだ。 その時、女の子に告白されることがないから気が楽だなーと言って慶介は笑ってた。 じゃぁ告白しにいっちゃうのー?ってからかったら、今度は寂しそうにそれは無理だけどと答えた。 無理ってなんだよ。遠距離? てか、「好きな人いる」発言が告白を断る口述でないことがわかってしまった。 随分長い間悩んでるんだと思う。きっと辛いよなぁーと、経験のない俺ですら気の毒に思った。 だから、好きな人が誰なんだーとかちょっと気になりはしたけど、聞かないでおいたんだ。慶介とは1番仲がいいし、嫌がることはしたくなかった。 しかし、時が経てば色々と変わるものだ。 なんと最近、ようやく勇気が出たのか、その好きな子に告白してみようかな、と俺相談してきたのだ。 「ま……マジでか!?」 「うん、玉砕覚悟だけどね」 そう言った慶介の瞳は、キリッと真剣そのものだった。 応援してるからな、彼女出来たら言えよ!と喜んだが、一瞬なぜか傷ついたような表情をしたあと、ノリが娘に熱くなるお母さんだって苦笑された。苦笑いする前ってあんな顔になるのかなーとか思ったけれど、とりあえず俺もにへへと笑う。 まだ決心が揺らいでいる証拠なのかもしれない。 いざとなったら、親友として俺が背中を押してやらねば。 だから頑張れよお前も!そう言うと、やっぱり慶介は寂しそうに笑うのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |