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ギミックボーイ



……そんなことも込み込みで、慶介にはどうしても迷惑かけたくない。


恋に悩む慶介は、女装男子なんて気持ちの悪いモノと一緒に恥をかいている余裕はないのだ。


青春は短し、歩けよ慶介。うん。



そんなクダラナイことを考えながら、学校に間に合うギリギリの電車に乗る。


幸い、俺の顔がわかりそうな生徒は乗りあわせてないみたいだった。


ふぅ、と一息ついて、手すりを掴む。窓の外を眺めていると、少しだけ気持ちが落ち着いた。





迷惑かけたくない。


……とか言って。


本当のところ、自分の女装について気を使われたくないってそれだけだったりする。


慶介のやつ優しいから、絶対にフォローいれてくる。


「似合ってるよ……凄く」的な。


しかも「凄く」のところは後乗せサクサク感ハンパないとかね。ありうるわー。


何も知らない人が見れば、そりゃ女の子に見えるでしょう。悪魔の黒魔法が効いてたみたいですから。


でも、中身が男だとわかっていれば話は別である。



……引くよねー、絶対。


正常な人間なら、まず真っ先に引くだろう。



そういう哀れみの目で見られるのだけは勘弁して欲しいんだよな。ひどく惨めな気分になるし、メンタル弱いから人間辞めたくなるだろうから俺。



ま、取り敢えずそうならない為にも、今日1日をなんとしてでも乗り切らねば。


1日くらい学校サボってもいいような気はするが、なんかシャクだ。


何この妙な敗北感。あんな姉に負けるとか屈辱以外の何物でもない。いや屈辱とか負けるとか正直よくわかんないんだけど。


あとは、姉に殺されかねないが、思い切って女装を落としてみる作戦である。


……と思ったが、不覚にも男物の着替えを持ってき忘れてしまった。


仮に遅刻する覚悟で顔の変装を落としてみたところで、それこそ正真正銘の変質者になってしまうではないか。


つまり、男の顔でひらひらのスカート姿。あっはは……そっちのがマジ笑えねぇっつの。




うーん……ならどーするよ。

……アレか、もう吹っ切れてしまおうか。



女装しちゃったんだけどさー!以外と似合ってねー!?



……つーノリで。


いや。いーやいやいやいや。そんなの俺のプライドが許さない。そこまで楽観的な人間でもないし。





でも、さ。


じゃあ、どうするよ?



もんもんと考えているうちに、高校の最寄り駅に着いてしまいそうだった。



『次はーー法成学院前、法成学院前』


アナウンスが入る。俺の通う高校の名前だ。



どうしよう、と答えは出ないままに、電車のドアは開いたのだった。





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あきゅろす。
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