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雪月花
11
「俺に何か?」

俺の問いに女は不敵な笑みを浮かべ、
「あなた、今女の子にシノブさんって…呼ばれてた?」
「は?いや…まぁ、そう言う名前なんで」
何を言い出すんだ、コイツは?
抑えようにも、俺の顔がどんどん女への不信感に満ちていく。


「ちなみに――――」

女の眼光が鋭く光った。

「“れいん”って言ってた?」
「…は?」

女は俺の気も知らず、胸元のポケットから一枚の紙切れを取り出す。
いい加減にしてくれないか。
俺は人を待たせてるんだ。
重い荷物を持ってて手も痺れて来てるし。

「実は私、ある人を探しているの」
「ある人?」
「そう、二人居るんだけどね。
一人は、六条れいんって言う女の子を」

女は淡々と、良く知った名前を言ってくれた。

「え…?」
「そしてもう一人は…その六条れいんと最近行動を共にしているという、黒霧忍と言う男」


「―――――」
…俺?え?

俺の反応を見るや、女は口元を歪め、
「その顔、やはりあなたで間違いないようね。
そもそも、れいんなんて名前の人、そうそう居るはずないし。
こんな所で見つけられるなんてラッキーだわ」
とか言い出しやがる。

「俺達を探してたって、お前は…」
「あなたの事、調べさせてもらったわよ?
名前、黒霧忍。種別、吸血鬼――――」
女は自慢気に、その紙に書いてあるであろう事を読み上げる。
他にも色々、俺のプロフィールを読み上げるつもりなんだろう。
が、俺もここで反論させていただく。
このやり取り、そろそろいい加減にして欲しいぜ。

「おいおい、そっち系の話をするクセに俺の設定を知らないって事は、やっぱアンタ新キャラですか?
俺は吸血鬼じゃなくて希種なんだよ」
今となっちゃお決まりの弁解。

しかし、目の前のソイツは、
「私には吸血鬼の波長なんて判らないし判るつもりもない。だからあなたが吸血鬼だろうと何だろうとどうでも良いの。
もう、充分な理由があるんだもの」

今まで判ってくれないキャラが居ただろうか?
あの純志麻でさえ耳を傾けてくれたのに、この女は何て言った。
どうでも良いだと?

ざけんなっ!!
これ以上一方的に言わせてたまるか。

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あきゅろす。
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