雪月花 9 商店街は平日の昼間って事もあってか、主婦の方々で溢れていた。 この感じだと、今日はスーパーで特売か何かやってるのだろう。 おばちゃん達の両手には、かなりの量の買い物袋が下げられている。 そんなおばちゃんの群れの中に――――― 「あれ?」 「…あ」 俺が気が付くと同時に向こうも俺に気付いた様で、その人物もまた両手に大量の買い物袋を持ちながら、俺の元へと走り寄って来た。 「忍さん、今お帰りですか?」 「おぉ、テストで今日は学校も半日で終わりなんだ。 ユマッペこそ買い物か?まだ昼時だが…学校はどうした?」 そう、今俺の目の前に笑顔で立って居るのはご存知、浅葱邸の誇る家政婦・橘友真である。 ユマッペはいつもの服装で、いつもの様に買い物袋を両手にぶら下げている。 今日は普通に平日だろ? 俺達と同じくテスト期間ってワケでもなさそうだし… 「えへへ、今日は…寝坊しちゃって……」 言って、ユマッペは言葉を紡ぐ。 ユマッペが寝坊とな? これまた珍しい事もあるもんだ。 「さては、サボりだな?」 如何にも、推理小説で犯人が解った時のように、勝ち誇った笑顔で言ってやる。 「えへ…ご名答です♪」 「やはりな。まぁ俺もしょっちゅうサボってる身、とやかく言える筋合いはないわ」 「あ…でも忍さん、どうして商店街の方に? れいんさんは一緒じゃなくて?」 ユマッペは明らかに重そうな買い物袋を持ち直し、単刀直入に聞いてきた。 確かに、別に用事がなきゃ通る道でもないしな。 特別遊べるスポットでもないし。 せいぜい子供が喜びそうな店なんて、ここにはあってもおもちゃ屋くらいだ。 てか、俺とれいんがいつも一緒に居るみたいな言い方やめてくれない? 俺とれいんで1セットみたいな言い方やめてくれない? 別に良かろうよ、俺一人でも。 「いや、まぁ…ちょっと参考書を見に本屋にな。俺レベルにもわかるのがあれば良いんだが」 「なるほど♪」 と、大きく頷くと、ユマッペは一度呼吸を整え、 「あ…あの!もし忍さんさえ良かったら一緒に帰りませんか!? これから丁度薫の所に行くつもりだったので!」 [前へ][次へ] [戻る] |