雪月花 3 よくよく考えてみれば、俺はれいんの学力については何も知らなかった。 顔色一つ変えずに豪語するくらいだ。 コイツ勉強得意だったのか? 教えてもらえば良かったぁあああ…ッ! 机に一人でガンガンと頭を打ち付ける。 何かツッコミが飛んでくると思ったが、皆さんは答え合わせの方が重要らしく、誰も俺に見向きなんてしなかった。 このまま頭がカチ割れるくらいまで叩き付けたら、逆に頭良くならないかしら。 「ちなみにさ、最初の記号問題の答えだけど――――」 神童が、今俺が一番気になっている事を聞き出そうとしている。 咲羅から、れいんから! 必然的に俺の耳は大きくなる。 この喧騒の中、それを絶対に聞き逃すまいと。 「あの記号問題の答えって、一問目から順に『イ』『ア』『ウ』『イ』『イ』『イ』『ア』で良いの? 四問目から『イ』が三問連続だから不安でさ」 ―――――えっ? それを聞いた咲羅は、 「えっ?四問目から『イ』が四問連続じゃなかった?」 一問目から『ア』が四問連続じゃなくて? 俺の顔から血の気が引いていく。 そんな俺なんて気にもせず連中は、 「とりあえずあんま自信はないけど、二問目は『ア』で間違いないよな?」 「うん、二問目は『ア』だね」 「残念。私『イ』にしちゃった」 「ははっ!ドンマイだぜ、れいんちゅわん!うっかりさんだな」 「神童くんだって七問目間違えてるクセにッ。六条さんの事言えないわよ」 「おっと、こりゃ一本とられたぜ」 HAHAHA…と一斉に笑う一同。 無駄にウィットな感じが実に腹立たしい。 ってか、 二問目『エ』にしちまったからぁぁあああああっ! 結局『ア』で良かったのかよ! てか、今神童の言ってた解答… 俺のと全然違かったんですけどぉぉおおお!? 特に咲羅もれいんも指摘しなかった所から察するに、あれが大体正解って事か? やばい。これはヤバス。 記号問題全滅…じゃね? 俺の体が無意識にガタガタと震えだす。 寒気がするのに冷や汗が止まらない。 出来る事なら、今すぐバルス!と叫んで学校を破壊してやりたいくらいだ。 飛行石なんざ持ってねぇけどさ! それがダメなら猫バスに乗ってどこか遠くまで逃げ―――― キーンコーンカーンコーン。 チャイムは無情にも、生徒の声を切り裂いて鳴り響く。 高らかに、ただ高らかに。 [前へ][次へ] [戻る] |