[携帯モード] [URL送信]

雪月花
119
意識を失ったとか、そう言うワケじゃない。
それが、六条の顔が俺の目の前に近付いてきたせいだと理解したのは、その直ぐ後だった。
「ちょっ!」
慌てる俺。吐息がかかる程の近距離だ。
「大丈夫」
六条が相変わらずの小さな声で言う。
あまりの近距離ゆえ、照れやら何やらが俺を襲う。
そのまま――――


「……っ」
何が起きたか判らなかった。
数秒後、少しずつ冷静さえを取り戻した俺の頭は、現状を理解する。
六条の唇が俺の唇に触れたのだ。
六条は唇を離す素振りを微塵も見せず、俺の口内に六条自身の唾液を送り込む。
そして唇を離すや否や、
「飲んで」
そう言った。

「――――――」
ワケの判らない状況に、当然俺はテンパる。
飲んでだ!?唾液をか!?
んなもん、ビックリしてされた瞬間に飲み込んじまったよ!!
ってか…

「お……


俺のファーストキスがぁああああ!!」
突然の俺の大声に、六条はビックリして俺の上半身を支えていた手を放す。
それと同時に俺の体は布団の上に叩きつけられた。が、んな事は今はどうでも良い。

「お、お前何してくれてんの!
咲羅とすらまだした事なかったのにぃいいいい!!」
そうだ。彼女とすらキスした事ないのに、何で六条なんかとしなきゃならないんだよ!
しかもフレンチキスどころか大人のキスだ!

「もうお婿に行けない。
高校卒業するまでは健全なお付き合いをすると心に誓っていたのに…
それも彼女以外の女とだよ!
俺のファーストキスを返せぇええええ!!」
暴徒と化した俺に、六条はいつもの感じで、
「落ち着いて」
と言ってくれる。

「これが落ち着いてられるかッ!
お前何してくれてんの!?ってか自分が何したか判ってる!?
もっと自分を大事にしろよ!仮にも女の子なんだから!」

「落ち着いて。今のが治療だから」
六条はいつの間にか、定位置となった部屋の角に背中を預けていた。
「今のが治療だ!?どう言う事だ!」
「私に流れる体液は、人の治癒を促進させる効果がある」
と、特に照れた様子もなく説明しだす六条。

「…あん?」
「私が傷を負っても直ぐ治るのはシノブも知ってるはず」
確かに、あの夜マンションの屋上から落ちた時も、その数日後には傷一つなくピンピンしていた。それは認めるが…
「だからって…き、キスはさぁ…」

そんな未だモジモジしてる俺を見た六条は、
「他には…血液を飲むって選択もある。
血液も同じ作用があるし」
それはちょっとなぁ…マジで吸血鬼みたいだしイヤだ。

「キスに抵抗があるなら、私の唾液をペットボトルか何かに入れておくから、それを保管しておけばいい」
それこそ気が退けらぁ!


「ってか昨日の夜も応急処置したって言ってたけど…って事は…」
「だから今日のはファーストキスじゃないわね」

[前へ][次へ]

15/102ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!