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〜そして助手は苦笑い〜 28
先日の公園でも、最後に我が輩がヤコのシャツの釦を留めてやった覚えがある。
衣服をくつろがせるのも良いが、再び整えるのも悪くはないな…
覚えておいて損はないか…
釦を留め終えると、ヤコはすぐさま身を翻し、ドアに向かい鍵を開けた。
笹塚刑事と後輩の…名を何といったか…刑事は、たった今エレベーターを下りたところのようだ。
我が輩は書棚の適当な本を取り出し、調べものをしている体裁をとることにした。
アカネが髪束を揺らし、何か訴えている。
『………』
アカネの訴えを聞き入れた丁度その時に、
「こんにちは、笹塚さん、…えっと……いらっしゃい」
ヤコが精一杯の愛想笑いで、あまり…どころか全く歓迎せぬ客人を迎え入れた。
…そういえば…
ヤコのリボンを付け直すのを忘れ、テーブルに放りっぱなしの上、側に我が輩のジャケットも放ってあるが、まぁ構わんだろう。
笹塚刑事がそれに気付こうがどう思おうが、知ったことではないな。
我が輩は笑おうとしたが…
……きっと、苦笑いしか浮かべていなかったのかもしれん。
少なくとも、ヤコにはそう見えるに違いない……
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[*前P]
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