[携帯モード] [URL送信]

main storyT
〜そして助手は苦笑い〜 17

―…なのに…―

 ことばを途切れさすヤコに、我が輩はそれ以上ことばを紡げなくしてやる……


 ヤコの目には、笑いながらからかう我が輩は、余裕綽々で憎たらしいとしか映らぬものであろうか。

 だが実際の我が輩はヤコが思う程余裕がある訳ではない。

 それを…若干の余裕の無さをヤコに悟られぬよう振る舞うので、少々手一杯なのだが。


 ヤコは今はジャケットの袖を掴むので、互いの体に隙間が生じていた。我が輩はその空間を縫い、ヤコの胸元に指を忍ばせる。
 リボンの留め具と、シャツの釦を3つほど外す。

 ヤコは全身をピクリと震わせたが、特に抵抗の様子は見られない。
 外したリボンをヤコの後ろのテーブルに落とす時に、ちらりと瞳だけでアカネの姿を探すのがわかった。

 アカネは我が輩が命じ壁紙の後ろに下がらせたのだから、姿がないのは当然ではあるが。

 密かに安堵したのか、からだが弛緩したのがわかる。

 見られていなくとも聞かれていることは明白で、ヤコも判っているだろうに…それは今は構わないらしい。
 アカネは我が輩を大胆だと思っているようだが、ヤコもいざというときは同じなのかと、妙に愉快な面持ちとなる。





[*前P][次P#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!