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〜そして助手は苦笑い〜 17
―…なのに…―
ことばを途切れさすヤコに、我が輩はそれ以上ことばを紡げなくしてやる……
ヤコの目には、笑いながらからかう我が輩は、余裕綽々で憎たらしいとしか映らぬものであろうか。
だが実際の我が輩はヤコが思う程余裕がある訳ではない。
それを…若干の余裕の無さをヤコに悟られぬよう振る舞うので、少々手一杯なのだが。
ヤコは今はジャケットの袖を掴むので、互いの体に隙間が生じていた。我が輩はその空間を縫い、ヤコの胸元に指を忍ばせる。
リボンの留め具と、シャツの釦を3つほど外す。
ヤコは全身をピクリと震わせたが、特に抵抗の様子は見られない。
外したリボンをヤコの後ろのテーブルに落とす時に、ちらりと瞳だけでアカネの姿を探すのがわかった。
アカネは我が輩が命じ壁紙の後ろに下がらせたのだから、姿がないのは当然ではあるが。
密かに安堵したのか、からだが弛緩したのがわかる。
見られていなくとも聞かれていることは明白で、ヤコも判っているだろうに…それは今は構わないらしい。
アカネは我が輩を大胆だと思っているようだが、ヤコもいざというときは同じなのかと、妙に愉快な面持ちとなる。
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