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〜以上…未満〜 06

 最早笹塚は、何かを言う気にはなれなくなってしまう。


「…じゃあ弥子ちゃん、またそのうち…な。
 お大事に…」

「笹塚さん、いつもありがとうございます!」

 笑顔で手を振りつつ、助手と共に一瞬で踵を返した探偵の様子を不思議に思ったが…面倒臭いので、考えないことにした。





 煙草に火を着けながら何気なく、歩き去る2人の後ろ姿を眺める。


 助手と並んで歩く少女は、頭に置かれた手について抗議でもしているのか、半ば笑いながら助手を見上げ何か言っているのがわかる。

 助手は顔向きをかえてもいないのに、一言二言返しているのが、笹塚には何故か判った…





 助手が、少女の頭からゆっくり手を離す。

 助手の黒革の手袋が、少女の頭から後頭部…首筋…肩…そして腰をゆっくりと…


―撫でてるのか…?―


 そして、離れ、何事もなかったかのように、2人は歩く…




「…参ったな……」




 再びこの科白。今度は声に出して、独りごちる。



 何故か、口癖の、

―ま、どーでもいーけど…―

 …が、喉元でつかえて出てこない……





 だが……


 助手が、少女を結局は大切にしている片鱗が見えるなら、良いのだろうと…
 そう思うことにしよう…と…思い直す。







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