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short
隣の机のルーズリーフ

…怪現象(机の中に入っているルーズリーフ)の謎は解けたものの、俺の悩みは尽きる事がない。


「…はい、辻川。これ二限の世界史な」


主にこの、何でもないようにサボリ分のノートを手渡してくる隣の席の男、斎藤千春(さいとう ちはる)についての事が。



* * *



俺がサボった授業の板書をルーズリーフに書いて机の中に入れていた犯人が、隣の席の少年、斎藤千春(名前は英に教えて貰った。アイツは無駄な部分だけ記憶力がいい)だと知ってから、一週間。

あの日臆面なく俺に「好き」だと言った斎藤は、だからと言って特別態度を変える事はなく、ただ淡々と日々を過ごしている(ように見える)。

休み時間である今だって、隣席の俺と友達ヅラして雑談するよう真似はせず、黙々と手にした文庫本に目を落としているのだ。…俺の方には全く目もくれず…だ。


(コイツが何を考えてんだか、さっぱり分かんねえ…)


「好き」だとか言ったクセ、斎藤に俺と仲良くなろうという意思は全く見られない。

…そもそも好きってどういう意味だ。友愛か、親愛か……恋愛か。…いや、最後のはあり得ねえか。
ウチの学校は多少女子の割合が少ないとはいえ普通に共学だし、わざわざ男……しかも俺みたいな不良を好きになる意味が分からん。んな筈はねぇ。

俺は頬杖をついたまま、隣の席で読書を続ける斎藤を眺める。

染めた事なんてないだろう、さらさらとした黒い髪と瞳。きちっと着こなした制服と締められたネクタイ。板書をする時に使うノンフレームの眼鏡は、今はケースにしまわれて机の端に。…つくづく俺とは全く対極にいる、優等生然とした大人しい生徒だと思う。

ぺら、と文庫本のページを捲る指。男にしては細く、また見た目に違わずインドアなんだろう、色も白い。


(顔は普通だけど全体的に何かキレイ………って何を考えてんだよ俺!!)


頭沸いたのかと思うような感想が自然に浮かび、俺はぶんぶんと頭を振った。

…ついでに、字も綺麗なのは渡されたルーズリーフを見れば知れる。纏め方が上手いと思っていれば、斎藤は定期テストの成績は常に上位組らしい。…との英情報。進級スレスレだった俺とは偉い違い。羨ましい限りだ。


「……辻川」
「はっ? …ん、あぁ…何だ?」


今まで文庫本に視線を落としていた斎藤が不意に顔を上げて此方を呼ぶので、身構えていなかった俺は思わず気の抜けた声で返してしまう。…まぁハッタリ効かせる意味もないし、わざわざドス声で応える必要はないんだけど。


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