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* * *



(…にしても、マジでこのノート気になるよな…)


机の上に頬杖を付き、ぼんやりとルーズリーフを見つめる。

それは前の時間の古典のノートで、今やってる世界史とは全く関係が無いが、別に教師すら俺には目を向けていないからいいだろう。(そもそも、俺が授業に出てるって時点でレアだ)

イギリスだか何だかの革命だとか、欠片も興味のない教師の話を聞き流しながら、俺はふと右側の席──先程目が合ったヤツの方へと視線を向ける。

真面目に授業を聞き、真っ直ぐに黒板を見つめノートを取る横顔。…先程は何の変哲もないだなんて思ったが、その姿勢は何処か綺麗だと思えた。


(…そうだ、ノート)


ふと思い立ち、ソイツの手元を見てみる。駄目元で、自分のトコロに入っている物と同じ筆跡だったらなんて思って…。


「…──って、あぁ!?」


ソイツのノートを見た俺が思わず声を上げると、教室中が此方を振り向いた。(例外として、英のバカヤロウは机に突っ伏して爆睡していたが)

板書をしていた教師(世界史の教師はこのクラスの担任だ)も此方を振り向き、呆れたように言った。


「…辻川、授業を受けてくれるのはいいが、静かに受けてくれ…」
「…あー、ハイ」


進級関係で色々世話になり、担任には強く出られない俺が曖昧に頷くと、担任はまた板書を再開した。此方を振り返っていたクラスのヤツらも、ぱらぱらと前を向く。

俺は何となくため息を吐き……思い出した、俺が思わず叫んだ理由を。


(…ノート、マジでコイツの筆跡と同じじゃねえか…!)


隣の席で、何食わぬ顔で授業を受けているソイツの。整った字に、色ペンで纏められた綺麗なノート。俺の手元にあるソレと、同じ筆跡のノート。

担任が余所を向いているのを確認し、俺はソイツの肩をせっついた。


「…何?」


振り向いたソイツは、あまりにも普通。…俺もクラスで浮いている自覚はあるが、ソイツの態度は普通だった。

じっと此方を見る黒の瞳と目を合わせ、俺は口を開く。


「…ノート、」
「ノート? 取りきれなかったんなら、こっちは書き終わってるけど」


言いながら示されたのは、最早見慣れてしまった字で書き綴られたソレ。


「…じゃなくて、俺の机にノート入れてんのって、お前か?」
「俺だけど。何かあった?」


誤字でもあったか?、などと首を傾げるソイツはあまりにもサラッとしている。…俺がどんだけ怪現象に悩んだと思ってんだ。


「そんなんじゃねえ。…そもそも、何でお前俺の机にノートなんか入れてんだよ」
「アンタが授業受けてないからだろ」
「別に頼んでねえだろ」
「自己満だもん、頼まれてなんかなくてもやる」
「…はぁ?」


あくまでサラリと言い張る、名前もよく知らないソイツ。

何コイツ、マジで物好きなヘンなヤツ? 二人分のノート取るなんて、どう考えても面倒だろ。


「自己満って……、ボランティア精神旺盛だなおい」
「ボランティアってか…さ」


そこで初めて、終始淡々としていたソイツは口ごもる。

突然の歯切れの悪さに、俺は眉を上げて先を促した。


「…んだよ」
「……好きなヤツの為に、何かしたいって思うもんじゃん?」


例え自己満でもさ、と続けたソイツの頬は、何故かほんのり赤く染まっていた。


「…は…?」
「…だから別に気にしなくていいよ、俺が好きでやってるだけだからさ」
「は……え…?」


言いたい事だけいったソイツは、さっさと前を向いて板書を再開していて。

隣にいるのに取り残された俺は、数瞬後にハッとして思わず叫ぶ。


「っ、気にしないだなんて、出来る訳ねえだろうが──!!!」



「辻川っ!!」、と怒鳴った担任のチョークが飛んでくるまであと一秒。















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不良×平凡(?)の短編。攻め視点で、攻め←受けという、自分的にはやや珍しい話。

何か、サボりの間にいつの間にかノートが入ってるとか面白いなー、と思い立ったら発作的に書いてしまった…(笑) 久々にサラッと読める短編を目指しましたw


ていうか受けの名前が出て来てない…! 一応続きを書く気はあるので、次回には…ι

受け子の性格は、唯人よりも更に淡々としてます。肝も据わっていて、「だから何?」な精神w
攻めはどこにでもいそうな一般不良です(笑) 総長とかではない、普通の不良w 美形寄りだけど、超絶美形とまではいきません。


書いてるうちに攻めが進級出来るまでの経緯とか色々小ネタっぽいのも出来たんですが、そもそもこの話自体が小ネタだという… ←

でもくっつく話も書きたいです、一応w


10/1/11

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あきゅろす。
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