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そうでなくても、此方も二年前までは現役の高校生だ。高二レベルの問題くらいならば問題なく見れる筈。
アサキくんが取り出したのは、英語のプリントだった。…良かった、文系科目ならば結構自信がある。
飲みかけのコーヒーをテーブルの端に寄せ、プリントを広げられるだけのスペースを作る。
「分からないところがあれば、遠慮なく訊いてくれていいから」
「あ、ありがとうございます」
椅子に座ったまま、アサキくんはまた頭をぺこっと下げた。
訊かれてもいないのに教える事もないだろうから、俺は出番が来るまで暫しの待機時間だ。
シャープペンをくるくると回しながら広げたプリントと睨めっこをする彼の旋毛を、アイスコーヒーを啜りながらじっと眺める。
案外すらすらと問題を解いていくアサキくんに、あれ、もしかして俺のお節介必要ないんじゃね?、なんて思い始めた矢先に彼はふっと顔を上げた。
「…高町さん」
「あ、ごめん、見過ぎだった?」
「え? あ、いや、此処がちょっと……分からないんですけど」
「あぁ、えっと此処は……」
良かった、ガン見が感に障った訳ではなく、素直に俺の出番が来てくれたらしい。役立たずにならないようにせいぜい頑張ろう。
アサキくんはそれなりに成績は良い方なのか、前半の単語や単文の問題はすらすらと埋め、最後の長文の問題で引っかかってしまっているようだ。
まぁ、長文訳はなかなか難しいよな。要旨だけ摘んで訳せれば、なかなか行けるんだけど。
「――この文の重要な部分は、だいたいこの辺に書いてあるから……」
「……あ、この問題の答えがこれですね」
「そうそう。…辞書は持ってる?」
「あ、はい」
アサキくんの取り出した電子辞書を使いながら、出て来たイディオムの説明。
「此処、特別な意味で訳すから、注意してね」
「はい」
うん、やっぱ、素直な子が相手だと教えるのも楽しいな。アサキくんは呑み込みも早く、教えた事をすぐさま吸収していくので教え甲斐がある。
試験前になるとやれノートを見せてくれだの、レポートを映させてくれだのと言い出す同級生のアホ共とは大違いだ。…前者はともかく、後者はもちろん却下だがな。レポートは自分でやれ!
「…あ、よし。出来た!」
そうこうしているうちに最後の問題を解き終えたらしいアサキくんが、そう言ってシャープペンを置いた。
「ん、見せてみて」
「あ、はい」
差し出されたプリントに、ざっと目を通す。うん、俺の目から見ても、間違ってそうなところはないな。
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