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アットホーム・ラブライフ
7

こんなんで店が立ち行くのかと大概心配にもなるのだが、この人の審美眼と品揃えだけは確かなので、俺のような喫茶店やカフェを営む人間からの人気は高い。常連はそこそこ多いので、何とかなっているのだろう。

俺の後ろから入ってきた雄飛の「この店大丈夫なのかよ……」と言いたげな雰囲気も感じるが、まぁその気持ちはよく分かる。でも品揃えだけは確かだから、と囁いて改めて宮野さんを見た。

欠伸をしながら目を擦っている彼は、ぱっと見年齢不詳のお兄さんだが、俺よりも十は歳上だったと記憶している。まさかのアラフォー。初めて会った時、童顔仲間だとつい思ってしまったのは内緒だ。


「……で、今日は何がご入り用?」
「あー、コーヒーカップを」
「コーヒー? この前買って行ったじゃない。割ったの?」


くぁーっと大欠伸をかましながら訊き返され、俺は首を振った。俺の後ろにいる雄飛の姿は、彼には見えていないのだろうか。雄飛は俺よりも頭一つ分は身長が高いし、目立つ筈なんだけど。


「そうじゃなくて、彼の分」
「……」


そう言って躰をずらして雄飛を示すと、無言でやりとりを見守っていた雄飛がやっぱり無言で会釈をした。

宮野さんは眠たげな眼を軽く開き、雄飛をまじまじと見つめる。見つめられた雄飛は、やや居心地が悪そうだ。助けを求めるように俺の服の裾を握った彼に、俺は小さく笑った。


「とりあえず、適当に店内見てるんで」
「分かった。決まったら起こして……」


それだけ言うと、また宮野さんの頭はカウンターに沈んだ。……すぐに聞こえ出す寝息。驚愕の寝付きの良さだ。


「……大丈夫なのか、この店」
「うん、そう言いたい気持ちは良く分かる」


居眠りどころかガチ寝に見える宮野さんに、雄飛がやや引きながら囁きかけてくる。ついに声に出しちゃったか。気持ちは分かる。

俺はコーヒーカップの棚に視線を走らせながら、肩をすくめた。


「まぁ、店は大丈夫だよ。いい品が揃ってるし。店主は大丈夫じゃないけど」
「……」


俺の答えに、限りなく微妙な顔をする雄飛。

気を取り直して、俺は彼の意識を棚に誘導した。


「とりあえず、見てみろよ」
「……、へぇ、これ、レコードで使ってるヤツだな」
「此処で買ったヤツだからな」


流石に毎日来ている常連だけあって、雄飛はすぐにウチで使っているカップを見つけた。でも、これは値段的に高校生の雄飛が家で使うには適さないと思う。

値段を見て眉を寄せた雄飛に、それよりひと回り安いカップを示した。


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