アットホーム・ラブライフ
6
雄飛と繋いだ手は、そのままだ。改めて考えると、俺も何だか恥ずかしいような微妙な気持ちだが、何故か雄飛はしっかりと俺の手を握り込んでいる為振り払いはせず、そのまま歩く。
弟妹たちもそれぞれ大きくなってしまったし(必ずしも身長的な意味でではない)、誰かと手を繋ぐだなんて改めて考えてみれば久しぶりだ。
眉間に皺を寄せているのに案外しっかり俺の手を握り込んだ雄飛の手は、少しだけひやりと冷たい。暑い季節だが、このお陰で俺の方は少し心地好くもあった。
けれど、雄飛の方はどうなのだろう。繋いだ手は離さないまま、俺は何気なく訊いた。
「暑くないのか?」
「…あ?」
「手、雄飛より俺の方が熱いみたいだから」
「……、アンタの方から繋いできたんだろ」
ぶすっとしながら言った雄飛は、そう言いながらもやっぱり手は離す様子はない。
いや、雄飛がいいなら俺もそれでいいんだけど……。なんか、時間が経つにつれじわじわと恥ずかしさが増してきたような気もする。
少し耳が赤くなった俺を見て雄飛が小さく頷いていた事には、俺は気が付かなかった。
結局雄飛と手を繋いだまま、目指しているのは馴染みの陶器屋だ。陶磁器のコーヒーセットやティーセットなどを中心に品揃えしていて、うちの店で使っているカップやソーサーもいくつかは此処で買い付けたものである。
「あ、此処だ」
「…へぇ」
店の前で足を止めると、その小さな洋風の屋敷のような店の佇まないに雄飛は小さく声をあげた。
雄飛一人だったら、絶対にこの店には立ち寄らないだろうな、と思って小さく笑う。
「えー…と」
店に入る前、繋いだ手をどうしようかなと相手を見つめると、肩をすくめた雄飛はするりと手を解いた。案外呆気なく離された手に、ほっとしたような少し寂しいような微妙な心地を覚える。
ともあれ、気を取り直して店に入る事にしよう。
少し重いドアを引くと、奥のカウンターで居眠りをしている頭が見える。……いくら暇だからといって、営業時間中に堂々と寝るのは如何なものか。
「あのー、すみませーん。宮野(みやの)さーん?」
知り合いの店員……というか彼がここの店長だが、とにかく奥で居眠りしている彼の名前を呼ぶと、沈んでいた頭が重たげに持ち上がった。
「あー…? いらっしゃーい?」
「いらっしゃーい、じゃないですよ。何営業時間中に寝てるんですか、他に店番もいないのに」
「あー…。……、あ、なんだ藤くんか。いらっしゃい」
「なんだ、じゃないですよ、もう……」
相変わらずやる気のない人だなぁ。
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