アットホーム・ラブライフ
13
逃げ道を塞がれた告白に、俺はどうすればいいのかが分からず俯いた。
ドクドクと煩い心臓の音を聞きながら、何とか絞り出したのは拙い言葉。
「……、俺、男だけど」
「知ってる。……そんなの、今更」
「……」
濁すような俺の言葉を、雄飛は簡単に払い退ける。……そうだよな、こんな風に告白してくる時点で、雄飛にとってそれは大した問題ではなくなっているのだろう。
と、いうか、雄飛は元々同性に恋愛感情を抱くタイプだったのだろうか? い、いや、性癖は人それぞれだけどさ。でも、俺は今の今までそんな発想はなかったし、……やっぱり、困ってしまう。
困惑する俺の耳に、吹き込まれるような雄飛の声。
「……気持ち悪いとは、はね退けないんだな」
「えっ」
すぐにはその言葉の意味が分からず、ぱちりと瞳を瞬かせる。
気持ち悪い? 何が?
「男に、好意を向けられる事」
「え?」
内心の疑問に答えるように付け加えられた言葉に、俺は思わずきょとんとして雄飛を見上げた。
気持ち悪い? 雄飛からの好意が?
見上げた雄飛は何も言わなかったが、その言葉を否定して欲しいと懇願するような表情をしていた。
そんな強引に見えて臆病な少年からの好意を、気持ち悪いなんて思う筈がない。
「……気持ち悪くなんて、ないよ」
「……あぁ」
雄飛がほっ、と息を吐くのが、密着しているから分かった。背中に回された腕の力が、少し強くなる。
「じゃあ、藤はどう思った? ……俺が好きだ、って言って」
「え、あ、えっと……」
気持ち悪いなんて思う筈がない。嫌…だとも思わない。
でも、
「……困ってる。かな。どうしたらいいのか、分からないんだ」
雄飛に好かれて、俺はどうしたらいいのだろう。
一回り歳下の少年。28歳の俺から見ればまだまだ子供だが、背も高くて顔立ちも整っているのだ、同年代の中ではきっとモテるんだろう。
そんな彼が、こんな童顔なだけの年増(自分では若いつもりだが、10代から見れば充分年増だろう)の、しかも同性に好意を向けているなんて。
「なんで、俺なんか……、ッ!?」
呟きかけた言葉を遮るように、背中に触れていた筈の雄飛の手がパンッ!と俺の頬を叩くように包み込んだ。
びっくりして見上げると、怒っているような低い雄飛の声。
「俺なんか、じゃねえよ。俺は藤じゃなきゃ駄目なんだ」
「……ぁ、う」
ストレートな告白に、また躰が強張る。
――困る。どうしよう。
(嫌じゃないんだ。……今、うっかり『嬉しい』だなんて思っちゃったんだ)
嬉しい、なんて。それじゃ、言い訳が出来ないじゃないか。
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