アットホーム・ラブライフ
14
雄飛の両手が触れている頬は、きっと真っ赤になって熱を持っている。けれど、きっとそんな俺と同じくらいに、雄飛の頬も赤い。
林檎みたいに真っ赤な顔をして、雄飛がまた口を開く。
「……藤、好き」
「……う、ん」
心臓がバクバクと煩い。再びの雄飛の真っ直ぐな告白にいたたまれなくなって俯こうにも、相手に両頬を掴まれているので視線を逸らせない。
どうしよう。嫌だなんて思えない。雄飛の好意に喜んでしまう、ときめいてしまう。
真っ赤な顔のまま呆然と雄飛を見上げる俺をどう思ったのか、雄飛は再び俺の背を引き寄せて抱き締めた。頭一つ背の高い雄飛の頭が俺の肩の上に乗って、さらりと相手の髪の感触が頬に触れる。
熱を持った視線が外れたのはいいが、これだけ躰が密着しているのもまた耐え難い。ぐりぐりと肩に額がこすりつけられる感触がこそばゆくて、俺は身を捩った。
「…そんな可愛い反応するなよ」
「は、え…? ちょっと放して……」
「ヤだ。……ったく、俺がどんな想いでいると」
放して欲しいと身を捩る俺を押さえ付けるように、また強く雄飛に抱き締められた。
何だか耳元で妙に可愛い却下と……ちょっと不穏な響きな呟きが聞こえた。
(……ってか、当たってるよ、雄飛……)
……高校生の稚拙な欲情に気付けない程、俺も子供じゃない。ちらちらと腰に触れる感触はリアルで、雄飛の『本気』をこれまた直球に伝えていた。
「……いや、それは駄目だろ、犯罪になっちゃうだろ」
思わず俺は首を振った。
繰り返すが、相手は未成年で高校生。俺との歳の差はちょうど一回り、12歳差だ。
「…俺の方が手を出すつもりだから大丈夫だ」
「いや、大丈夫じゃないだろ!」
首を振る俺が何を思っているのか察したのか、雄飛が身も蓋もない事を言ったが、俺は顔を上げて叫び返した。
てか、それでもやっぱり犯罪!!
「犯罪でも何でもいいよ。藤、好きだ」
「あ、う……よくは、ないだろ……」
よくはない。よくはない……のに、雄飛の甘い言葉にたじろいでしまう。
ていうか雄飛の方が手を出すつもりって……、やっぱりそういう事、だよな。
ストレートな劣情への物言いを聞いても、その事自体への嫌悪は湧かなかった。
困るなぁ。俺、雄飛に本気で迫られたら拒める気がしない。
離さないと言わんばかりに俺をきつく抱き締める雄飛の腕の中で、俺はため息を吐いた。
思った以上に俺、雄飛のこと好きなんじゃないか。少なくとも、抱かれてる事自体はまったく嫌だと感じないくらいには。
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