short (ss)
wanna be your… (リクエスト)
※水無月様、リクエストありがとうございました!
「only you」「just only you」の続きです。
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今、この瞬間に。
その時を逃してはならない。
そう思って、後悔すること、幾度目だろう。
『 wanna be your… 』
もし、あの日の雨が止んでいたら、きっと。
お互いに気付かず、すれ違っていただけかも知れない。
だけど、気付いたところで「お疲れさま」という、月並みな声掛けしか出来なかった…。
もし、あの夜真っ直ぐ帰っていたら、きっと。
同じく飲み会に誘われた彼女には、逢えなかった。
だけど、離れた席に座ったこともあり、結局言葉を交わすことはなかった…。
接点がなさすぎることに、彼女はため息をつく。
いい加減、この感情をどうにかしたいと、彼はため息をつく。
任務の班が異なるのは、いつものことだ。
集合場所は大抵どの班も同じ、南大門。
今朝も複数の班が集い、班員同士が固まっている光景が見られた。
もし、いつも通りの時間に出発していたなら。
きっと逢えなかった。
多くの人の中でもひと際目立つ、端正な姿を目で追う。
今日こそ。
サクラは思い切って、彼に近づいた。
「…おはよう。サスケくん、この前の怪我はどう?」
「…ああ、どうってことねぇ」
振り返った長身の彼は、相変わらず無駄のない所作と口調だ。
サクラは、安堵したような笑顔を浮かべる。
彼女が、先程からこの集合場所にいることは知っていた。
職務上の対応だ、と内心考えて、サスケは目を逸らせた。
出発時間だ。
―――――もし、あのとき。
3週間前の、医務室での事を思い出す。
2人だけで会話した、ほんの数分。
あの僅かな時間さえ、とても貴重だったことに今更気付いた。
偶然とは、なかなか巡り合わせのないものだ。
まるで、最初から回数が決まっているかのように。
赤い糸で引き寄せられているのが、想い合う2人だとしたら。
自分にそれは当てはまらないな、とサクラは思う。
二人きりになったり。
任務が一緒になったり。
そんなことは、この先全くと言っていいほどないだろう。
顔には出ない、行動や態度にも出ないという自信はある。
しかし、ささいなことで内面の感情が浮き沈みするのには、思わず舌打ちをする。
こんな面倒な感情なら、永遠に深く奥底にしまい込むべきだ、と彼は思う。
――――――できるなら、の話だが。
それよりも、そもそも。
12歳のあの時、同じ7班になったことが全ての始まりだったのだから。
****
偶然は、突然降ってくる。
その日、一人で報告に向かい、帰りにとある待機所に入ったところ。
サスケは、余計なことを耳にしてしまった。
「マジかよ、おまえ」
「……ああ、ついにさ…。でも返事待ち、かな」
2人の忍がぼそぼそと会話する声は、聴きたくなくとも耳に入ってくる。
理由はサスケにも分かっている。
はじめに、サクラの名が出たからだ。
ここの近くには医務室がある。
手当された様子からして、今日の医療当番はサクラだったのだろう。
「…………」
他にも、たむろする男たちはいる。
そっちに混ざればいいとも考えたが、立ち上がるとさっさと部屋を出た。
どこか別の場所で時間を潰すために。
「返事って…?」
「ああ、何かさ、忘れられない、気になる人がいるんだってさ…。サクラ先生」
*****
驚いた。
「ずっと気になってたんです。迷惑でなければ、今度一緒に食事でも…」
これまでに、想いを伝えられたことは、何度かある。
その時と同じ事を言って、丁重に断った。
……つもりだったが、「それでも構いません」とまで言われてしまった。
「……どうしよう」
どうしよう、というのは先程の彼の事よりも。
10年近くずっと想い続けている、あの彼のことだ。
最近はごく淡泊な関係だ。
いや、そもそも顔を合わせること自体殆どない。
もう、見切りをつけたほうがいいのかな……。
そう思って数年。
サクラはため息をついた。
「どうしたんだよ…」
はっ、と顔を上げる。
(神さま……!!)
特に信じている宗教があるわけではないが、心の中で強く叫ぶ。
目の前には、たった今想い浮かべていた、彼その人がいた。
「疲れてんのか?」
「あ、ううん!」
怪訝そうに眉を寄せるサスケに見惚れながらも、慌てて手を振って否定した。
「ちょっと…びっくりして…っ」
「…何に」
まさか、愛しい人が、丁度目の前に現れたからなどとは言えない。
サクラの翡翠の瞳は宙を泳ぐ。
そんな様子に、彼は益々眉をしかめた。
(気を…悪くさせちゃったかな…)
いずれにしても、彼には関心のないことだろう。
半ば、諦め気味に。
サクラは赤い唇を開いた。
「―――――告白、されたんだ」
チラ、とサスケを見上げる。
予想通り、眉間を緩めはしたがそこには無表情が。
「断ったつもりだけど…」
サクラは内心酷く落胆しながらも、声のトーンを保って続けた。
「……ふーん」とだけ、低い声が降ってくる。
サスケに告白をしたわけではないのに、何故か泣きそうになる。
どうして、こんなこと話してしまったんだろう。
表情を悟られまいと、俯いた。
「興味ないよね」
「………ないな」
自虐的に重ねた言葉に、更に尖った刃物が突きたてられた。
一瞬見開いた瞳は、もうじわじわと涙が浮かんでくる。
頭の上を石で殴られた気がした。
立っているのが不思議なくらい、身体が重くなる。
しかし、次の言葉に、その顔を上げた。
「知ってた……どうでもいいことだ」
目の前には驚いたような翡翠の瞳が揺らめいている。
自分をじっと見つめる、探るような眼差し。
昔から、この瞳に見守られていた。
改めて、胸に熱いものがこみあげてくる。
もしも、があるとしたら。
偶然があるとしたら。
二人だけになれた、今この瞬間だと思った。
「……それは、オレにしておけ」
「……え…?」
fin.
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2012.8.27
水無月さま、ありがとうございました!
お待たせしてしまって、申し訳ありません!!
こんな感じでよろしければ、お持ち帰りくださいませ!
「only you」 「just only you」の続編です。
上記の話の中では、お互いがそれぞれに片想いでしたが、くっつくところまでをというリクエストをいただきましたので!^^
あまり詳しく書いても支離滅裂になってしまうので、簡潔にまとめました!
最後をどうとらえるかは、読んで下さったあなた次第です(笑)
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