short (ss) wanna be your… (リクエスト) ※水無月様、リクエストありがとうございました! 「only you」「just only you」の続きです。 ******* 今、この瞬間に。 その時を逃してはならない。 そう思って、後悔すること、幾度目だろう。 『 wanna be your… 』 もし、あの日の雨が止んでいたら、きっと。 お互いに気付かず、すれ違っていただけかも知れない。 だけど、気付いたところで「お疲れさま」という、月並みな声掛けしか出来なかった…。 もし、あの夜真っ直ぐ帰っていたら、きっと。 同じく飲み会に誘われた彼女には、逢えなかった。 だけど、離れた席に座ったこともあり、結局言葉を交わすことはなかった…。 接点がなさすぎることに、彼女はため息をつく。 いい加減、この感情をどうにかしたいと、彼はため息をつく。 任務の班が異なるのは、いつものことだ。 集合場所は大抵どの班も同じ、南大門。 今朝も複数の班が集い、班員同士が固まっている光景が見られた。 もし、いつも通りの時間に出発していたなら。 きっと逢えなかった。 多くの人の中でもひと際目立つ、端正な姿を目で追う。 今日こそ。 サクラは思い切って、彼に近づいた。 「…おはよう。サスケくん、この前の怪我はどう?」 「…ああ、どうってことねぇ」 振り返った長身の彼は、相変わらず無駄のない所作と口調だ。 サクラは、安堵したような笑顔を浮かべる。 彼女が、先程からこの集合場所にいることは知っていた。 職務上の対応だ、と内心考えて、サスケは目を逸らせた。 出発時間だ。 ―――――もし、あのとき。 3週間前の、医務室での事を思い出す。 2人だけで会話した、ほんの数分。 あの僅かな時間さえ、とても貴重だったことに今更気付いた。 偶然とは、なかなか巡り合わせのないものだ。 まるで、最初から回数が決まっているかのように。 赤い糸で引き寄せられているのが、想い合う2人だとしたら。 自分にそれは当てはまらないな、とサクラは思う。 二人きりになったり。 任務が一緒になったり。 そんなことは、この先全くと言っていいほどないだろう。 顔には出ない、行動や態度にも出ないという自信はある。 しかし、ささいなことで内面の感情が浮き沈みするのには、思わず舌打ちをする。 こんな面倒な感情なら、永遠に深く奥底にしまい込むべきだ、と彼は思う。 ――――――できるなら、の話だが。 それよりも、そもそも。 12歳のあの時、同じ7班になったことが全ての始まりだったのだから。 **** 偶然は、突然降ってくる。 その日、一人で報告に向かい、帰りにとある待機所に入ったところ。 サスケは、余計なことを耳にしてしまった。 「マジかよ、おまえ」 「……ああ、ついにさ…。でも返事待ち、かな」 2人の忍がぼそぼそと会話する声は、聴きたくなくとも耳に入ってくる。 理由はサスケにも分かっている。 はじめに、サクラの名が出たからだ。 ここの近くには医務室がある。 手当された様子からして、今日の医療当番はサクラだったのだろう。 「…………」 他にも、たむろする男たちはいる。 そっちに混ざればいいとも考えたが、立ち上がるとさっさと部屋を出た。 どこか別の場所で時間を潰すために。 「返事って…?」 「ああ、何かさ、忘れられない、気になる人がいるんだってさ…。サクラ先生」 ***** 驚いた。 「ずっと気になってたんです。迷惑でなければ、今度一緒に食事でも…」 これまでに、想いを伝えられたことは、何度かある。 その時と同じ事を言って、丁重に断った。 ……つもりだったが、「それでも構いません」とまで言われてしまった。 「……どうしよう」 どうしよう、というのは先程の彼の事よりも。 10年近くずっと想い続けている、あの彼のことだ。 最近はごく淡泊な関係だ。 いや、そもそも顔を合わせること自体殆どない。 もう、見切りをつけたほうがいいのかな……。 そう思って数年。 サクラはため息をついた。 「どうしたんだよ…」 はっ、と顔を上げる。 (神さま……!!) 特に信じている宗教があるわけではないが、心の中で強く叫ぶ。 目の前には、たった今想い浮かべていた、彼その人がいた。 「疲れてんのか?」 「あ、ううん!」 怪訝そうに眉を寄せるサスケに見惚れながらも、慌てて手を振って否定した。 「ちょっと…びっくりして…っ」 「…何に」 まさか、愛しい人が、丁度目の前に現れたからなどとは言えない。 サクラの翡翠の瞳は宙を泳ぐ。 そんな様子に、彼は益々眉をしかめた。 (気を…悪くさせちゃったかな…) いずれにしても、彼には関心のないことだろう。 半ば、諦め気味に。 サクラは赤い唇を開いた。 「―――――告白、されたんだ」 チラ、とサスケを見上げる。 予想通り、眉間を緩めはしたがそこには無表情が。 「断ったつもりだけど…」 サクラは内心酷く落胆しながらも、声のトーンを保って続けた。 「……ふーん」とだけ、低い声が降ってくる。 サスケに告白をしたわけではないのに、何故か泣きそうになる。 どうして、こんなこと話してしまったんだろう。 表情を悟られまいと、俯いた。 「興味ないよね」 「………ないな」 自虐的に重ねた言葉に、更に尖った刃物が突きたてられた。 一瞬見開いた瞳は、もうじわじわと涙が浮かんでくる。 頭の上を石で殴られた気がした。 立っているのが不思議なくらい、身体が重くなる。 しかし、次の言葉に、その顔を上げた。 「知ってた……どうでもいいことだ」 目の前には驚いたような翡翠の瞳が揺らめいている。 自分をじっと見つめる、探るような眼差し。 昔から、この瞳に見守られていた。 改めて、胸に熱いものがこみあげてくる。 もしも、があるとしたら。 偶然があるとしたら。 二人だけになれた、今この瞬間だと思った。 「……それは、オレにしておけ」 「……え…?」 fin. ********* 2012.8.27 水無月さま、ありがとうございました! お待たせしてしまって、申し訳ありません!! こんな感じでよろしければ、お持ち帰りくださいませ! 「only you」 「just only you」の続編です。 上記の話の中では、お互いがそれぞれに片想いでしたが、くっつくところまでをというリクエストをいただきましたので!^^ あまり詳しく書いても支離滅裂になってしまうので、簡潔にまとめました! 最後をどうとらえるかは、読んで下さったあなた次第です(笑) [*前へ][次へ#] [戻る] |