影踏エントランス 巷で噂、弓神堂さまのドッペルゲンガー白カノちゃんのイメージを書かせて頂きました。 ディセイブ記念って事で。 *** 「はーぁ……」 「猫目さん、どうしましたか?ヒキニート病でもうつりましたか?」 「それならシンタロー君はレベル5の超危険人物だね」 「レイトン教授が何ですか?」 「会社じゃない会社じゃない」 カノの座っているソファーがぎしりと音を立てる。 エネはカノのスマホ画面を旋回し、アプリ入れすぎですよと呟いた。 シンタローは部屋に籠って作曲作業をしている。珍しくも彼のパソコンはオフライン状態で、エネも邪魔をする余地が無かった。 「というかさ、シンタロー君はいじられキャラ(もといツッコミ役)で満足なのかなあ?ヘタレ攻めくらいの勇気は見せて欲しいな」 カノは、少し伸びた髪をくるくるといじくった。 「でもご主人、フラグ立てようとかそういう志すら折れてますよ?バキバキどころか消化されてネトネトですよ」 「うっわすごい気持ち悪い擬音」 「何ですかね、ネガティブという名の酸で溶かすぜみたいな。……あ、そうそう」 エネは紙切れをジャージのポケットから取り出した。 それをぴらりと自分の胸の前にかざす。 「これ。見に覚えありますか?」 取り調べみたいな質問だとエネは思い、少しわくわくした。 カノは目を見開き、口に手を当てた。 「……えっと…これ僕でしょ?あーぁ、盗撮?あんまり考えらんないけど、誰かそういう趣味の変態でもいた?」 「カノさん、こんな服持ってないでしょう?タンスの中も、ネットショッピング購入履歴も確認しましたけれど」 まるで犯罪者を追い詰めるかのようで、エネの胸を緊張と期待が満ちていく。 紙切れには、カノと瓜二つの風貌の青年が写っていた。 頭のてっぺんから靴底までそっくり。 ただ違うのは、その青年がカノの黒いパーカーを逆にしたようなパーカーを着ているところだけだ。 数日前。 青年に会った後、シンタローは路地裏に倒れた。服装の乱れは無く、ただ寝ているように。彼のスマホの電源は切られていたため、エネはそれに気付かなかった。 翌朝路上で起きたシンタローは、自身の考えをなんとかエネに話した。 興味を持ったエネは情報収集を始め、この写真をようやく手に入れたのだ。 「わかんないなあ。僕は孤児院出身だし、大穴で生き別れの兄弟とかじゃな」 「目、真っ赤ですよ」 ハッとカノは息を飲み、後ろのガラス窓に顔を向けた。 ガラスに彼の顔と、赤い瞳が映った。 「そこまで言いたくないこと、ですか?」 静かな空間に、エネの透き通った声が響いた。 「……ぁ、はは。」 カノは上を向き、ゆっくりと笑い出した。 少し鼻にかかった、いやらしい笑い方だ。 「はは、は…はははは…」 笑い声は少しずつ大きくなっていく。 気でも狂ったのか、とエネは思った。 彼女はとても嫌そうな顔をして、カノの口元を見つめていた。 数分間、カノはげらげらと笑い続けた。 声は少しずつ静まっていき、カノは再びエネの方を向いた。 「―聞きたいかい?」 たった一言。 6文字の、ただの文字列。 そう思えればよいのだが。 エネには、この言葉がとてもおぞましく聞こえた。 カノの目は血のように赤黒く、何かどす黒いものを内包しているように、彼女は感じた。 「いいよ、別に―あいつの事、だろう?」 カノはくすりと微笑んだが、その目には光が灯っていない。 いつもメカクシ団で笑っている彼の姿は、ここには無かった。 *** 伏線を張ってみた。 カノは白カノのことが大っ嫌いみたいな。 もう嫌いすぎて笑っちゃうみたいな。 弓神さま、ありがとうございました! frontfollow |