面倒くさい偏食家
※現パロ
三郎は偏食だ。俺も豆腐ばかり食べる傾向にあるから大概偏食なのだろうけど、好き嫌いがある訳ではない。
ただ、好きな物を食べ過ぎてしまうだけで。
三郎は違う。嫌いな物が多い。そのひとつがこの納豆だ。
「うわ…くさ…。朝っぱらから兵助本当やめて…」
異色な物を見る目つきで俺と納豆に対峙する。朝っぱらから鬱陶しいのはお前の方なんだけど。
「納豆美味しいよ。健康にいいし。豆繋がりで豆腐の親戚だし」
「お前豆腐の親戚なら誰でもいいのか。だったら麦茶の変わりに醤油でも飲んでろよ」
このようによく分からない理屈を並べて言い訳する様は子供を彷彿させる。三郎はあまり親しくない者には近寄るなオーラを出しているから、冷たい印象をもたせる。
が、実際仲良くなるとこれだ。三郎のことを「クールで素敵」なんて言ってる女子に教えてやりたいものだ。
「納豆のどこが好きなんだよ」
「じゃあ、逆に聞くよ。どこが嫌いなのさ」
「どこが?そもそも納豆って腐った豆だぞ?腐ったものは受け付けないだろ。普通」
「三郎チーズ大好きじゃん。さけるチーズうっすく裂くじゃん」
「さけるチーズ馬鹿にすんな」
「してねえよ。お前を馬鹿にしてんだ。」
このままでは埒があかない。俺が折れない限り平行線は続く。もうこの話はお開きにするべきだ。試合終了の合図を三郎に送った。
「…ま、好みは人それぞれだもんな。俺は納豆を食う。お前は食べない。はい、終了。」
俺はもうお前の相手をしません。そういう訳で先ほど食べていた納豆にまた箸をつける。
箸に絡まる粘り気に心を移すが、それ以上にじっとりとした目線を送られた。
「…何」
文句あるなら言えよ。面倒な男だ。そういう態度がまた子供じみている。
「歯、よく磨けよ」
それだけ言うとぷいとそっぽを向いてしまった。何、歯磨き?ドリフターズ?よく分かんないんだけど。そのまま三郎は無視して食事を進めた。
食事を終え、余韻に浸りながら先ほどの三郎の言葉を思い出す。歯磨き…歯磨き…あ、そういえば以前俺がもずくを食べた後にキスしたら、三郎の体調が悪くなったことがあった。そして「何でもずく食べたって言ってくれないんだよ!」と怒られたんだ。その時もどんだけ偏食なんだよ。面倒くせえ、って思って気がする。
なるほど。今回もそれか。俺とキスしたくても納豆が間にあっては出来ないということか。
可愛いとか思えるほど俺は優しい男ではない。ただただ面倒くさい、その一点のみ。
なので三郎にも聞こえるように少し声をはった。
「今日は夜まで歯磨きしないでおこうかな」
背を向けた三郎の表情は読み取れないが、あいつのことだ。落胆していることだろう。
知らねえし、偏食の壁位飛び越えてキスしてみろよ。
女々しいあいつに苛立っているのか。はたまた納豆に負けた自分に苛立っているのか。
ただ三郎をからかいたいだけなのか。
自分の気持ちに疎い俺には審議は不可能のようだ。
面倒くさい偏食家
0720
納豆の日を記念して!のつもりが遅れすぎました。三郎が女々しい。久々鉢ではなく鉢久々だと言い張る
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!