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きみが好き

※現パロ


皆さん、こんにちは。バレンタインです。

あ、すみません間違えました。鉢屋三郎です。
浮かれすぎ?気持ち悪い?死んでこい?
今の俺にそんな罵倒は痛くも痒くもない。なぜなら先週兵助にバレンタインの話をした所

「あー…そういえば去年お前チョコくれたな。じゃあ、今年は俺からやるよ」

とのお言葉をいただいたのである。俺は耳を疑った。そして10回確認して3回ほど蹴られた。
チョコがもらえるということにちょっと涙目になる俺をみて兵助は「俺のお前に対する仕打ちっていつもそんなにひどいのか?」と訝しげに尋ねた。
兵助の淡白さは本人は無自覚だから困りものだ。

じゃら、と金属音がした。

これはドアの近くになるとポケットから鍵をだす時の音。あいつの帰宅だ。


兵助が帰ってきた。緩む頬を引き締め直し、平然とした様子を装いソファーに腰かける。

「ただいま」

「ああ」

早くこの歯痒い感情を取り払いたい俺に対し、兵助は一向に行動を示さない。
いつものようにコートをかけ、手を洗い豪快にうがいをする。
俺は嫌な予感がした。そして十中八九このような予想は当たる。今までの経験から悟っているのだ。
俺は半ば諦めながら尋ねた。

「兵助…チョコは…」

少しの沈黙。兵助の中で記憶の糸を手繰り寄せているのだろう。この時点で俺は確信した。

「あ…ごめん。忘れてた」



声にならなかった。

兵助が何か言っている。

「一昨日あたりまで覚えたんだけど」

おかしいな、と首を傾げる様子が可愛くて不覚にもときめいてしまったが俺の心はそれでは晴れない。
女々しいと言われてもいい。いや、俺女々しいし、実際。兵助からのチョコでこんなにも一喜一憂するし。


そんな深く深く沈んだ俺に

「じゃあさ、なんか一つお前のお願いきいてやるよ。ほら、何でも言えよ」


「…何でも…?」

ひとすじの光が差し込んだ。

「じゃあ」

「うん」

「兵助からキス」

「うん、…は?」

「して」

「無理」

「いや、無理じゃないですよ。俺ら付き合ってる訳ですし」

ほら、と手招きすると兵助は警戒する猫のようにこちらの様子を伺った。そして俺の隣にどすんと勢いよく腰を下ろした。




兵助の顔がみるみる赤くなる。予想外の反応だ。頑なに嫌がると思っていたが、以外にも罪悪感を感じていたようだ。赤くなっているのは俺にキスをする意志がある証拠だ。あとひと息。

急かさずに沈黙を保つ。これでいい。




兵助が意を決したようにこちらに顔を向けた。そして目が合い俺の頬に手を伸ばす。
そのまま固まってしまった兵助につい口を挟む


「あの、兵助さん?」

「ちょっと待ってろ。あと少しだ」

耳まで真っ赤になり瞳が濡れている。兵助の鼓動が聞こえるようだ。そしてゆっくり、ゆっくりと俺の顔に近づいて


控えめに唇にふれた。





そして名残惜しいかのように時間をかけて唇から離れていった。

兵助の鼓動が唇から伝わってきたのか、俺の鼓動もどくんどくんと脳にまで響いた。


「もう一回」


今度はもっとゆっくりと俺を味わうように、舌先を遊ばせた後上唇、下唇と順々に甘噛みされる。兵助の溢れる唾液の音が部屋に響く。



「よくできました」



「…ばかにすんな」





本当はチョコレートなんかいらない。

お前さえいれば、ただただそれだけで幸せで




何度だってお前に恋する。




きみが好き






happy valentine!


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あきゅろす。
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