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石をお前にささげる(斎藤と尾浜)


※現パロ

尾浜→久々知←斉藤
久々知はでない



大掃除をしたら、小さな袋から小石がでてきた。石を手に記憶の糸を手繰り寄せば、子どもの時大切にしていた石だと分かった。

しかしあの頃の俺が何故この石を大切にしたのだろうか、その理由は考え抜いても答えはでなかった。
その時の気持ちもこの石のように保存できたらいいのだが、もちろんそのようなことは出来ない。俺はふと、その時の俺の気持ちが可哀想だと感じたのだ。
いつか忘れてしまうそんな気持ちは、俺の人生において不必要なものだったのだろうか。

そんなことを思いながら、俺はその石をそっとポケットの奥に潜ませた。


「兵助がわかんない」

「尾浜くんこげるよ?」


この言葉にできない感情で高ぶっている俺とは違いタカ丸さんは美味しそうに肉を喰らう。

あ、それ俺がキープしてたやつ


「絶対すぐ別れるよ。あんな奴、兵助の顔目当てだもん」

「そうだねえ」

「女ってだけでずるい」

「兵助くんは俺らと違ってノーマルだからねえ」

「素質はあると思うんだけどなあ」

俺とタカ丸さんは兵助を介して知り合った。
昔から兵助と仲が良かった俺は、この男を紹介された時ひどく驚いた。
金髪で、いかにも不真面目といった装い、しかも出会って間もないというではないか。人見知りの兵助の心をどうやってこんな短期間で開いたのだろうかと。


しかしその疑問はすぐに晴れた。この男は見た目とは違い誠実な性格で、器がでかく、大人の意見をもっていた。

俺自身、こいつには惹かれるものがあった。恋敵であったはずなのに心を許すのは時間の問題だった。

だから、兵助はこいつにとられるんだろうな、なんて漠然と思っていた。けれど予想に反し、兵助が選んだのはいたって普通の女の子だった。


「俺が兵助を好きな意味ってあったのかな」

「ん?」

「だってさ、どうせ付き合えないんだよ。そんでよく分からない女にとられて」


兵助は俺のこの気持ちを知ることはない。そして、俺のこの気持ちはいつか俺自身ですら忘れてしまうのだ。大事に大事にしていたこの気持ちもいつかは。

「でも俺は兵助くんが好きで幸せだったなあ。気持ちが通じないのは寂しいけど。」

「俺は兵助の幸せを願えない。早く別れればいいって思うよ。」

「そうだねえ、俺も尾浜くんが付き合った方がいいと思うなあ。良い子だもん」

「タカ丸さん…本当恥ずかしい人だよね」

「え〜でも本当にさ」

「いいから、もう」

「あとさ、意味がないことなんてないよ。兵助くんへの気持ちがあったからこそ今の尾浜くんがいるんだよ」

「でも俺は、この気持ちをいつまでも覚えていられる自信ない」

「覚えてなくてもいいじゃない。もう吸収されてるんだし」

「でも…」

「…じゃあさ、俺が覚えておいてあげるよ」

それでいい?





――思い出した。


あの石の正体を、

兵助と俺が初めて会った時に兵助が俺にくれたものだ。


『友達記念な』



ポケットに入った石を握りしめた。石は何故だか熱を帯びていた。

「タカ丸さんいいものあげるよ、手ぇだして」


忘れないでこの気持ち


次は君もさ





石をお前にささげる






涙がすこしでそうになったのは、
多分、煙のせいなんだろう


「あ、タカ丸さんそれ俺のタン塩ね」


0518
仲良し仲良し
ほんのりタカ勘


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