いっぱち物語(仮)
20
自分の分のういろう食べ終わって、クマさんのに手を伸ばしたら、同時にクマさんがため息を吐いた。あり?呆れられた?
「つーか、もじゃ宮の事ぁどうだっていいだろ」
爪楊枝にぶっ刺したういろうを口に運んでくれる。ん?呆れられたわけではない?
食べさせて貰いながら、首を傾げて先を促す。
「印南の事。全然話題に出さねえな」
一瞬固まったのを見咎めるように、クマさんが目を細める。
「頼れっつったよな。無理して笑うなって、言わなきゃわかんねえか?気丈なのも結構だけどよ、俺からしたら痛々しくて仕方ねぇ」
「何言ってんのー、クマさんてばwそれじゃーオレ、チョー健気な子じゃーんw」
「空元気に見える。好きな奴にあんな態度とられて平気でいられる奴はいねぇだろ」
「買い被り過ぎでない?もじゃ宮好きになってからの会長おかしいっしょ?あんぐらいそーてーの範囲内ッスよー」
「……はぁ…だから無理して、あいつがもじゃ宮を好きとか言わなくていいから。お前、今どんな面してっかわかってねぇだろ」
「――、」
反論しよーとしたけど、喉詰まって声が出ない。口…開かない……なんでかねー?
「泣きそうだ。つうか、泣いてるか。鼻赤くなってんぞ」
苦笑するクマさんが見えるけど、それもすぐ視界が滲んで見えなくなる、鼻がツンとする。喉が引きつって、唇が震える。
「な泣いて、ない」
「声震えてる」
「フマさんの、せえじゃん」
唇がふよふよ震えて喋りにくい。
「ふはっ、俺のせいか。あー、いいよ、それで。泣かせて悪かった。慰めてやっから、こっち来い」
「ままた、また、鼻水、付くから、っ、い、いい」
「付けていいから、イッパチ…」
そー言って、両手を広げてくれる。
あ゙ーもー、クマさんに泣き顔ばっか見られてる。オレの泣き顔ぐしゃぐしゃなのよ。ハズいのよ。
「いいから……おいで」
「――ッ」
あんまり勢い良く抱きついたから、ガタンッて大きな音出ちゃった。テーブルに膝打った。痛い。……痛いよ。クマさん…
「ぅえ゙、ク、クアざ、ん、ヒィック」
「ごめんな、泣かせて…いい子だな……お前はいい子だ」
「ふ――ぅぅ゙、」
飛び付いたからクマさんに跨るように座っちゃってる。重いだろーけど、ガマンしてもらお。
背中をさするクマさんの手の平が気持ちい。後頭部を撫でるクマさんの手の平があったかい。涙を吸い取ってくれるクマさんの唇が優しくて、吸い取りきれずに零れた涙を舐めとる舌が「大丈夫だよ」って慰めてくれる。
「いい子だ……」
――あの馬鹿の気が知れねぇな
唇だけで呟かれた言葉は聞き取れなかった。
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