Lover's end
5
だから、後悔は続く。
「『もしも』、私があのまま生きてたら、26歳なんだよね」
「そうだね」
「想像、つかない?」
「いや、さ、何て言うのか……」
「やっぱり、分からないかな」
彼女はタンポポの綿毛の様に再び浮き上がり、膝を抱えたまま顔を伏せた。
想像がつかないというよりは、彩華姉さんがあの頃のまま傍に居るのが当たり前過ぎた。
彼女は変化し続ける俺を間近で眺めながら、変化する事のない自分を淋しく感じていたのかもしれない。
「もしかしたらそのままカズ君が学校を出たら、やっぱり私が無理矢理カズ君を捕まえるかもしれない」
「捕まえるって…何さ…」
「そして結婚して、二人の子供が産まれて、家族みんなで笑いたかったな」
「……そうだね」
言葉を受け止める間にも、『もしも』と『どうしようもない過去』は俺達を切り刻んでいるだろう。
それでも、俺達は此処に在る限りは逃げられないし、悔やんではいけない。
それが、今の俺達の絆だから。
だからこそ、彼女は気兼ねなく、容赦ない『もしも』を語り、自分達を試すのだ。
過去から続く、この絆が断ち切れる時が、いつかと。
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