Lover's end 4 「……そうだね」 事実を認める。 互いが解り切っている現状にどうしようもない、『もしも』を刷り合わせようとするのは、俺達だけじゃない。 誰だって望んだり、願わずにはいられなかった『もしも』という理想が無数にあるから。 それでも事実を認めて、 それまでの過程を受け止めなくては、 俺と彩華姉さんの絆は成り立たない。 「──ねえ、後悔してる?」 その言葉の意味を俺は深く飲み込んだ。 「ああ」 それでも笑う。 後悔などしない日は無い。 『もしも』という、輝かしい日々はいつでも眩しくて、 そんな空想・仮定は常に誘惑するけれど、 現実には時間に置いてけぼりをされて、何も生み出しはしない。 彩華姉さんが死んでいなかったら、その仮定はまだ意味を成すが、 俺達は傍に居て、決して触れられない深い断絶を抱えている。 そんな『もしも』を羨ましく思わない訳はない。 羨ましく感じても、決して届かない『もしも』を都合が悪くなる度に振り切るのではなく、断ち切らない限りは、治りの悪いかさぶたの様に、ずっと俺達を苦しめるのだろう。 [*←前][次→#] [戻る] |