Lover's end
2
願いは叶った。
彼女はあの時から、俺の傍にずっと漂っている。
眠る事も無く、物を食べる事も無い。
所謂、「そういった存在」になった貴女は、いつの日も俺の傍で優しく笑ってくれている。
青と琥珀と綿雲。
土手から寝そべった空は高く心地よい。
そよぐ風は俺の髪を撫でていった。
彼女は宇宙飛行士の様に浮かびながら俺の頭上を周回。
スカートを押さえながら緩やかに着地し、微笑んだ。
「どうしたの?」
一拍。
風が走り去るのを待って、彼女は答える。
「……いや、ね、もう追い抜かれたんだなぁって」
「何が」
「身長とか、歳とか──って何言わせるのよ」
「彩華姉さん、可愛いじゃない」
頬を膨らませ、そっぽを向いて俺の言葉を可愛く拒否。
「カズ君、意地悪になったね」
「どう、かな?自分じゃ、分からないけれど」
「なった。それと、昔より凄くカッコよくなった」
並んだ土手の上。
誰にも見えない視線を合わせて、二人は微笑んだ。
「もう、カズ君、モテてるのに勿体ないなぁ」
「別に、俺はそんなつもりは」
「カズ君は気付かないだけで、結構居るみたいだよ。女の勘でビリビリ分かっちゃう」
言葉に詰まる。
分かってるのにそういう事を言うのは少し意地悪だと思った。
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