深い闇の底で見つけた光 02 でも、そんなことを深く考えていられるほど、余裕なんてなくて。 ただひたすらに吸血衝動と戦っていた。 「…っ…!」 「…血、飲みたいなら我慢しないで飲みなよ。遠慮、なんていらないからさ」 そう耳元で囁かれ、私が不意に顔を上げると。 「…っ!?」 目の前に血が出ている指を見せられて、私は堪えられずにその手をとり、怖ず怖ずと舌を伸ばした。 ゆっくりと舐めとっていくと、何だか落ち着くような感じがする。 傷が治る瞬間まで、一滴も残さず舐めとり顔を上げると、薫が笑いを堪えてるのが見えた。 「…何?」 「いや、案外くすぐったいものなんだなって」 薫は私が握ってる手とは反対の手で、私の頭を撫でた。 「…だったら私に血、見せないでよ」 「だって雪音すっかり忘れてたみたいだったから。このほうが手っ取り早くていいかなって」 「必要以上に苦しみたくないんだけど…」 ムスッとしたように言ってみると、薫が私の頭を軽くぽんぽんと軽く叩く。 …なんだろう。薫が前よりも優しくなった気がする。 それに、なんかこうされると落ち着くな…。 [*前へ][次へ#] |