携帯(※18禁)・4



 こんな状況にも関わらず、カイジのモノはアカギの手中で先走りを零し、擦られるたびに、にゅる、にゅる、と粘着質な音をたてている。
 いまや、カイジの体からはくったりと力が抜けきってしまい、アカギの支えなしでは立っていられないほどだ。

 それでも、ふー、ふー、と息を乱しながら、カイジはアカギを横目で鋭く睨みつける。
 体は陥落しても、心までは決して明け渡さない。
 そんな意思を感じさせる強い瞳に、アカギはゾクリとさせられ、より一層カイジを追い詰めようと躍起になる。
 耳の穴に舌を潜り込ませ、空いている左手で絶えず乳首を責め苛みながら、アカギはスパートをかけるように、ぐちゅぐちゅと大きな音をたててそそり立った肉棒を扱く。

 ヒクリと喉を引き攣らせ、カイジは電話の相手に向かって叫ぶように言った。

「な、何度も言ってるだろっ……っあ、明日は、明日だけは、代われねぇんだって……!」

 アカギはわずかに目を見開き、ぴたりと手を止めた。
 荒い息をつきながら、カイジはアカギをちらりと横目で窺い、目を伏せる。
「どうして、って……、とにかく、明日はダメなんだよっ……! どうしても外せない用事が、あるから……」
 相手を宥めるようなカイジの声を聞きながら、アカギは固まっていたが、やがて片頬を吊り上げると、右手の動きを再開させる。
「っ、ふ、うぅ……」
 突然速くなった動きに泣き声のような喘ぎを漏らしてしまうカイジの手から、アカギは造作もなく携帯を奪い取ると、自分の耳に押し当てた。
「……そういう訳なんで。それじゃ、」
 手短に言って、突然の第三者の出現に戸惑いの声を上げる佐原を無視し、アカギはブツリと電話を切る。
 そして、それをシンクの上に無造作に放ったとたん、今まで押し殺していた喘ぎ声が、カイジの口から溢れ出した。
「ぁはっ! あっ……あっ、アカギっ……!」
 甘い声で自分の名を呼ぶカイジをもう一度深く抱き直し、アカギはカイジを絶頂に導くべく、貪欲に手を動かす。
「あっ、はぁ……ん、ふぁ、あ……!!」
「どうしても外せない用事、ね……」
 ニヤリと笑うアカギの顔から、カイジは目を逸らす。

 明日は、ふたりで飯を食いに行こうと約束していたのだ。
 前々から決まっていたわけではなく、食いに行く店も近場のラーメン屋だったし、アカギにとってはカイジがバイトを優先させたせいでおじゃんになったとしても、どうということはない些末な予定だった。
 だがどうやら、カイジにとっては、そうではなかったらしい。

「かわいいとこあるじゃねえか、あんた……」
「っく! あっあぅ、あかぎ……っ!」
 頬を染め目に涙を溜め、カイジは快楽に身を委ねている。
 その扇情的な表情に喉を鳴らし、緩急をつけて根本から扱き上げると、カイジの足がガクガクと震えだす。
「あっ、イく……も、出るぅっ……! あっ、んっ」
 悲鳴じみた声で限界を訴えるカイジの、汗ばんだこめかみに唇を落とし、アカギが括れを強めに擦ってやると、ビクビクと砲身が震え、下着の中に熱い粘液が放たれた。

「ーーっ! く、うぅっ……!」
 射精の快感に酔うカイジの体を乱暴に返し、アカギは真正面からカイジの唇を奪う。
 貪るように舌を絡めると、カイジも目を閉じ、それに応えてきた。
 ぴちゃ……くちゅ……と水音をたてながらカイジの舌を気の済むまで舐り尽くしたあと、唇を離すとふたりの間を透明な糸が繋いだ。

 カイジは目を閉じたまま、アカギの体にもたれかかって荒い息を整えている。
 すぐさま、さまざまな罵り言葉が飛んでくるだろうとアカギは予測していたが、カイジはうっすらと目を開くと、絶頂の余韻を感じさせる潤んだ瞳でアカギを見つめ、はっ、とせせら笑った。

「……見えない相手にヤキモチか。ずいぶん、かわいらしくなっちまったもんだなぁ、赤木しげる?」

 挑発的に顎を上げ、アカギを見下ろすようにしてカイジは言う。
 余裕ぶってはいるが、その声には隠しきれない怒りが籠められている。

 アカギはすこしむっとしたが、ふっと短くため息をつくと、カイジをまっすぐに見て、呟いた。

「……そうだよ」
「……は?」

 思いがけない返答に、カイジはきょとんとする。
 アカギはカイジの顔に顔を近づけると、ゆらりと燃える黒い炎のような瞳でカイジを見つめ、続ける。

「妬いてたよ、どうしようもなく。電話の向こうにいる、姿も見えないような相手に」

 しばらくの間、カイジは口を半開きにしてぽかんとしていたが、急に火が付くように顔を真っ赤にすると、よろよろと後じさった。
「はぁぁぁ!? ちょっ……おまっ……!」
 ひどく間の抜けた声で呟きながら、カイジは赤い顔を両手で覆い隠すと、吐き捨てるように言う。
「なっ……なに、急に素直になってんだよっ……! バカかお前っ……!!」
 しどろもどろになり、あたふたと自分から距離をとろうとするカイジに、アカギはゆっくりと近づいていく。

 いつでもオレが、反駁すると思ったら大間違いだぜ、カイジさん。
 たまには、こんな手も使うさ。
 あんたより優位に立つためなら、プライドを投げ捨てて本音を晒すことくらい、造作もない。


 じりじりとカイジを壁際に追い詰め、アカギは力尽くで、カイジの顔を隠す手を引き剥がす。
 そうして現れたカイジの顔は、なぜだか泣きそうに歪んでいて、アカギはゆっくりと唇を吊り上げると、やさしく、絡め捕るような声で囁いた。

「オレを虚仮にしたいなら、もっとうまくやるんだな。カイジさん」






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