色魔・6(※18禁)


 粘膜が擦れ合ってたまらない快感が生まれ、ぬぷっ、ぬぷっ、という卑猥な水音に鼓膜まで犯される。
 張り詰めた男の陰茎を根本まで容易く飲み込んで、離すまいと絡みついてくる淫らな腸粘膜に眉を寄せ、男はぽつりと呟く。
「そろそろ、かな」
 その言葉を合図にして、カイジの体に明らかな変化が現れ始める。
 男のモノが激しく出入りするソコが灼けるほどの熱を帯び、そこからなにかが強烈に吸い上げられていく心地がするのだ。
「ぁ、あ、なに……っ? なん……だ、コレっ……、ぅくっ!」
 痛みはない。
 ただ、まるでじりじりと皮膚を剥がされていくような、言葉にしがたい不安感があった。
 今までの性感とはまるで違う、正体不明の感覚に困惑し、怯えるカイジに、男がぽつりと呟いた。

「……オレが『色魔』なんて呼ばれてるのには、理由がふたつあって、」

 話しながらも、男は腰を使ってカイジの体を嬲り続ける。
 がくん、と大きく揺さぶられた拍子に、目の前に垂れた自分の髪を見て、カイジは裂けそうなほど大きく目を見開いた。

 生まれてこの方、他の色に染めたことのない真っ黒な髪。
 それが、まるで絵の具を吸い上げる筆のように、毛先の方からじわじわとその色を変化させていくのだ。
 薄闇の中にあっても、眩しいくらいの雪白に。

「……理由のひとつは、こうして、人間の『色』を奪って食うから。」
「あ、あぁ……」

 危うく上がりそうになった悲鳴を喉で押し潰したカイジだったが、目の前で起こっている事への恐怖に我を失いかけ、ガタガタと震える己の体を御することさえ忘れていた。
 呆然としている間にも、カイジの髪はどんどん白い部分を増やしていき、ものの数分もしない内に、視界に入る髪はすべて真っ白になってしまった。

 男はカイジの後孔から陰茎を抜くと、カイジの体を反転させる。
 そして、カイジの左足を持ち上げると、向かい合わせの状態でもう一度挿入した。

「くあぁっ……!」
「もうひとつは、色を奪うとき、粘膜同士の接触が必要だから。」

 一気に奥まで貫かれ、カイジはびくんと仰け反る。
 曝け出された喉に軽く歯を立てて、男はカイジを突き上げながら滔々と語り出す。 

 「人間の言う『色魔』って、やらしい意味みたいだけど、オレはこういう行為を目的としてる訳じゃない。ただ、人間の『色』が欲しいだけ。もともと『色魔』は『色を奪う魔』って意味なんだよ。
だけど、色を奪う方法がこんなだから、いまや『色魔』といえば、変態を指す代名詞みたいになっちまってるわけ。」
 顔を覗き込むようにして、わかる? と問われ、カイジは男を睨みつける。
「実際、っ、ヘンタイ、だろうが、お前は、ぁっ……!」
 溢れ出る嬌声を懸命に抑えつつ、カイジは男を罵倒する。

 そう。カイジもすっかり忘れていたが、数十分前、男とカイジは確かにこんなやりとりをしたのだ。

『オレの、髪が欲しいのか?』
『本当はそうじゃないんだけど……説明するの面倒だし、まぁそう思ってもらえればいいよ』

(なぁにが『まぁそう思ってもらえればいいよ』だっ……! ぜんっぜん違うじゃねーかっ……!!)

「っの、どヘンタイ詐欺師っ……! ぅあっ、あっ!」
 罵声を浴びせられた男は肩を竦める。
「言ったでしょ、説明が面倒だって……。まぁ、確かに……今回はちょっとヤりすぎたね」
 カイジの頬の傷に口付けを落とし、男は労るような声を出す。
「本当なら、いつもみたいに、口から奪って終わらせるつもりだったんだけど……、あんたがあんまり初心でいい反応するから、つい気持ちよくしてやりたくなっちまって」
「嬉しくねぇよっ……! あっ、この、バカやろうっ……!」
 カイジは怒りに任せて怒鳴る。
 確かに、男に言われて気づいたが、粘膜同士の接触なら、最初にキスした時点で果たされているのだから、その後のペッティングやら本番やらは要らないはずである。
『いつもみたいに』と言う台詞から察するに、男は今までの被害者にはそうしてきたらしい。
 それを敢えて、この男はカイジの反応が面白いからと、こんな凶行に及んだのだ。
「あっ、うっううっ、……ちくしょ、抜け、ぬけったら……ッ!」
 こんなやりとりの間にも、相変わらず男のモノに弱いところをずんずんと突かれまくっているので、カイジの口からはぐずるような泣き声しか出ず、迫力というものがこれっぽっちもない。
 カイジが聞いた『色魔』の噂の『貞操を奪われる』という部分は、人から人へ伝えられる際にくっついてきた尾鰭背鰭の部分に過ぎなかった。
 しかしそれが今、皮肉にもカイジの体によって、真実となってしまったのだ。



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