色魔・7(※18禁)


 体は蹂躙されつづけ、何かを吸い出される感覚もどんどん強くなっていく。
 それと同時に、自分の絶頂が間近に迫っていることも、カイジは感じ取っていた。
「うぅ……っ、ふ、あっ、んぅうっ……!」
 安定を求めて、カイジは男の肩にすがりつく。
 体勢の僅かな変化によって、きゅうっ、と締め付けがきつくなって、男の薄い唇から熱い吐息が漏れる。
 それに気を取られ、男の顔を見たカイジは目を瞠った。

 伏し目がちな、白い瞼の下。
 まるで、水に墨を一滴垂らしたかのように、ほとんど透明だった硝子玉の瞳に、『黒』が、じわりと滲むように広がっていく。
 そして男の髪も、初めて硯に浸した下ろしたての筆のように、毛先からじわじわと『黒』に染まっていくのだ。

 その色がどこからきたものなのかはもはや明白だったが、あまりにも非現実的なその光景は、こんな間近で見ているにも関わらず俄には信じがたく、カイジは何度も目を瞬く。
 しかし、純白に薄墨が溶けて広がっていく様子を、カイジは純粋にきれいだとも思った。
 カイジの『黒』は男の持つ『白』と溶け合って、男の瞳を、髪を、花曇りの空のような薄灰色に染めていく。

 惚けたように見とれるカイジに、男はくすりと笑う。
「あ……っ!」
 こっちに集中しろ、とばかりに奥を突かれ、カイジの体に忘れかけていた快感が戻ってくる。
 男は激しく腰を打ち付け、絶頂へとカイジを追い立てる。
「ふぅあっ、あっ、うぁっ、ひぁあっ!」
 だらしなく涎を垂れ流し続けるカイジの唇は薄く開き、その間から物欲しげな舌が覗く。
 つやつやと濡れ光るそれに、男が食らいついた。
 ちゅく……ちゅ……といやらしい音をたてながら唾液を混ぜ合っていると、やがてカイジが首を振って限界を訴えた。
「っぷは! だっ、だめだ、イく、もうイくっ! あっうぅっ」
 カイジはぎゅうっと男にしがみつき、きつく目を閉じる。
 その拍子に、潤みきった目から涙の粒が千切れてカイジの頬を伝った。
 男の熱い舌がそれを嘗め上げるのと同時に、いちばん感じるところをぐりっと刺激され、カイジは再び絶頂を迎えた。
「ぁふぅっ……あっあっ、あーー!」
 ビクビクと震えながら先端から吐き出される精液は、二度目だというのにどろりと濃くて量も多く、カイジと男の服をびちゃびちゃと汚していく。

 カイジがイくと中がぎゅうっと締まり、男が眉を寄せて呻く。
「ーーっ……、オレも……」
 カイジの目許に唇をあてたまま、男は一層激しく腰を振る。
「このまま、出すよ……っ」
 掠れた声に、カイジはぎょっとした。
「ばっ! バカやろうっ……! そんな、気色わりぃ、こと……ッ、ふぁっ! あっ、もうソコ、突くなあっ……!」
 しかし、絶頂のただ中にいるカイジは男にすがりつく腕を解くことすらできず、ただただ哀れっぽい悲鳴を上げる。
 どろどろに熱い腸壁にもみくちゃにされる感覚を味わいながら、きつく締まる媚肉に押し入るようにして最奥を穿ち、男はそこで射精した。
「く、っ……!」
「あうぅっ! だ、出しやがっ……!? くそ、抜けよぉっ……、バカぁっ……!」
 あまりのことに泣きじゃくりながら、カイジは男の肩や背中を拳でぽかすか殴る。
 それに構わず、男は長い射精をカイジの中で終えると、満足げに深く息を吐いた。
 ずるりと性器を抜き取ると、栓をなくしたカイジの尻孔から男の精液が溢れ出す。
「ひ、ひでぇ……」
 内股をどろりと伝い落ちる感覚に身震いして、カイジは涙声でそう漏らす。
 男に中出しされた……。
 その事実に体の火照りが急激に冷め、寒気までし始める。

 持ち上げていたカイジの足を地面に降ろしてやり、男は青ざめて今にもふらりと倒れそうなカイジの腰を抱いて支えてやる。

「……ごちそうさま」

 満腹になった猫のように、男はぺろりと唇を舐めた。
 完全な薄灰色に染まっていた男の瞳と髪だが、一秒ごとにその明度を少しずつ上げ、元の髪色に戻ろうとしている。
 まるで、カイジから奪った『黒』を、ゆっくりと飲み込んでいくかのように。
「あんたの色って、甘いんだな」
 尊いものを慈しむようなその台詞を聞いたのを最後に、カイジの意識は真っ白に弾け飛んだ。




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