ごほうび(※18禁)・4


 自分の腕を掴んだまま、公園の奥の茂みにずんずんと分け入っていくしげるに、カイジは焦ったように呼び掛けた。
「お、おいっ……! お前、なにを……っ」
 すると、しげるはぴたりと立ち止まり、カイジの肩を側にあるムクロジの樹に押し付けた。
「『なにを』なんて、白々しい……オレがなにしようとしてるかなんて、ほんとはわかりきってるくせに」
「……ッ」
 湿った声で吐き捨てられ、カイジはカッと頬を上気させる。

 こんな場所でなんて……正気の沙汰じゃない。
 いつ、誰がやって来るか知れない。すぐ近くで子供たちの声もする。

 半狂乱になって逃れようともがくカイジの肩をしげるは強く押さえつけ、カイジの足の間に己の足を割り込ませて逃げられなくしてしまう。
「この……、離せ……っ!」
 ジタバタ暴れるカイジだったが、急にぎゅうっときつく抱き竦められ、驚きに目を見開いた。
「どうして? ワガママで身勝手な猫だけど、ちゃんとあんたの言うこと聞いて、いい子に『おあずけ』してたじゃない……」
 ふてくされたようなその言い草に、単純なカイジは不覚にも、心をキュッと掴まれてしまう。

 恨めしそうに見上げてくる、猫のような瞳。その淡い双眸は、しっとりと欲情に濡れていた。
 並んで歩いていても、苛立ちを押し殺しているように落ち着かなさげだったしげるの表情を、カイジは思い出す。

 しげるはまだ若く、欲望を御し慣れていないのだ。
 逃しようのない熱を孕み、ままならない体を抱えて苦しげにしている様子は、いじらしくて胸に迫るものがあり、この一連の仕草で、カイジはあっという間に、すっかり絆されてしまった。
 ワガママで身勝手な猫みたいでも、カイジはこのうんと年下の恋人が、かわいくてしょうがないのだ。

 うんうんと唸りながら、カイジはずいぶんと長いこと逡巡していたが、ごくりと唾を飲み込むと、ぎこちなく体の力を緩める。
「ちょっとだけ、だからなっ……」
 蚊の鳴くような呟きに、しげるはパッと顔を上げた。
 白い頬をうっすらと火照らせ、両目にぎらぎらと劣情を滾らせながら、しげるはカイジに顔を寄せ、衣擦れのような声で囁いた。
「うん、ちょっとだけ……」
「ん……っ」
 唇を塞がれ、カイジは眉を寄せて呻く。
 すぐさま絡んでくる薄い舌は、ほんのり甘い揚げ油の味がした。

 歯列を余すところなく舐め回し、舌を食み、唾液を送り込む性急さにクラクラしつつも、カイジは辛抱強く、宥めるように応えてやる。

 貪るようにキスしながら、しげるはカイジの足の間に割り込ませた己の足を軽く曲げ、ジーンズの上からカイジの中心を擦った。
「っ、あ……!」
 困ったように眉を下げ、カイジはしげるから顔を背けてしまう。

 しげるは離れていった唇を追うことはせず、今度は目の前に晒された首筋に顔を埋めた。
 熱い息を吹きかけながら、薄い皮膚にぴちゃぴちゃ舌を這わせると、カイジは笑いながら身を捩る。
「ひ、っ……う、擽ってぇ……しげ、っく……」
「本当? 本当に、擽ったいだけ?」
「う……っ」
 膝でやわやわと撫でられている股間が、ジーンズの硬い生地の中で膨らんできているのを感じて、カイジは恥じ入ったように口ごもる。
 そのさまに嗜虐心を刺激され、しげるはカイジの手を取ると、己の足の間へと導いた。
「恥ずかしがることないよ。オレのだって、もうこんなに……」
 言いながら掌をソコに強く押しつければ、痛々しいほどのその硬さに、カイジはうろたえた顔をする。

 首筋を軽く吸い上げて離れ、しげるはカイジの顔を見上げた。
「直接、触って? オレも同じこと、してあげるから……」
 ため息まじりの掠れた声でねだられ、カイジは戸惑いつつもしげるの腰に巻かれたベルトに手を伸ばす。

 こうなることは、想定の範囲内だった。
 だが、いざとなるとやはり屋外で抜き合うということにかなりの抵抗を覚え、カイジがもたもたしている隙に、しげるはてきぱきとカイジのジーンズのチャックを下ろし、下履きの中に手を突っ込んだ。
「あっ! あ、ううっ……」
 びく、とカイジの体が震える。
 窮屈な布の中で半勃ちのカイジ自身を器用に擦りながら、しげるはひそやかな声でカイジに催促する。
「ほら、早く……カイジさんも、」
 かぷりと下唇に噛みつかれ、カイジは涙目になりながらも震える手を動かす。
 カチャカチャと金具の音をさせて黒い革のベルトを地面に落とし、チャックを下ろしてこわごわと下履きの中に手を入れる。
 そこはしげるの体温でむっと温もっていて、張り詰めた幼い性器が天を仰いでいた。
 ためらいがちに指先で触れたとたん、しげるが目を閉じて悩ましげな吐息を漏らしたので、カイジは真っ赤になりつつも、その反応がもっと見たいという欲求に駆られ、ぎこちなく手を動かし始める。



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