「華を織る」 05 やがて背後から地響きに似た音が断続的に響く。 それに伴い、敷地内が俄かに騒がしくなる気配が感じられた。 「‥‥やり過ぎです、舞剣」 「全くだ」 蒼川らしい派手な幕開けに苦笑しながら、宮古と桜木は走り続ける。 手入れの行き届いた木陰の中を走る事暫く、二人の行く先には小振りの――とは言え一般的な民家に比べれば十分な大きさなのだが――建物が見えてきた。 「っ、」 刹那、二人はほぼ同時に足を止める。 予想内ではあったし、そして出来れば遭遇したくない相手でもあった。 「――此方に来ておいて正解だったな」 林の終点辺り。 木立と庭園の、光と影の境目。 木陰の薄闇から陽光を背に受ける様に姿を現したのは、桜木も宮古も馴染みの人物だった。 「賊が侵入したと聞いたが、やはりお前だったか、桜木」 既に戦闘態勢を整えている白夜は、視線を桜木から宮古へと移し、微かに眇める。「――そして宮古殿」 「‥‥」 時間が惜しい事もあり、それまで女装を解いていなかった宮古だったが、徐に外套と共に鬘を脱ぎ捨てた。 服装は綾菜から借用した護衛女官のまま、外套に隠す様に背中に背負っていた弓矢を構える。 [*前][次#] [戻る] |