「華を織る」
02
――ただ、その姿を目に出来ればよかったのだ。
気付かれない様に。息を潜める様に。囚われた様に。戦場で遭遇する度に少しずつ強さを増して行く姿を、ただ眺めていた。
時に軽口を叩き。時に剣呑な視線を向けられ。時に矢をつがえられながら。それでもなお、白夜は宮古を見続けていた。
「貴方と敵にならなければならない」
苦しいな、と思う。
睦言を交し合う様な間柄にはならないだろうと諦念しているとは言え、真剣をもって対峙するには無心になりきれなかった。
本当に苦しいと思う。
「――ああそうだ、宮古殿。今からでも遅くは無い、華剣とは手を切って私の元へ来てくれないか」
たった今気まぐれで思い付いたかの様な白夜の告白は、やはり宮古の耳には戯言として届いただけだった。
「‥‥貴方は敵です、白夜隊長。今までも、これからも」
一瞬、ほんの一瞬哀しげな表情を浮かべた宮古は、しかし口調は常と変わらず撥ね付ける様な強さで言うと、迷いを断ち切る様に鏃を白夜へと向けた。
ぴたりと狙い澄まされた眉間に疼く様な冷たい痛みを感じながら、白夜もまた正眼に剣を構える。
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