「華を織る」
01 ◆2◆
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「‥‥」
脇をすり抜けて行く桜木の後を追う事もせず、白夜はただひたすらに目の前に佇む宮古を見詰めていた。
着衣こそ護衛女官の嫋やかな衣服のままだが、外套下から現れたのは剣士然とした厳しい表情である。
その一見不釣り合いな組み合わせは、しかし宮古のやや女性的な風貌と細身の身体が相まって、凛とした不思議な雰囲気を醸し出していた。
しなやかな、それでいて一部の隙も無い所作で弓矢を構える双肩に、仄かな日差しが音も無く零れ落ちている様で。
――ああ、本当に貴方は。
「‥‥貴方は美しい方だ、宮古殿」
無意識のまま思わず呟いていた白夜の言葉に対し、宮古は表情に険しさを増しただけだった。
「こんな時に戯言をおっしゃっても困ります、白夜隊長」
「私は本気だよ、宮古殿。それにこんな時だからこそ、だ」
木立の中に立ち込める静謐な空気を乱す事に罪悪感に思いながらも、白夜もまた剣を握る双手に力を込めた。「――私は今から貴方と戦わなくてはいけない」
上からの命に従い戦場に赴いては、古馴染の様に何度も顔を突き合わす事となった東雲の華剣・桜木。
いつ頃からだろう、一人の小柄な青年がその背後を護る様に付き従い始めたのは。
そして女性的な細面の顔に似合わず、鋭く睨み付けてくる気の強そうな瞳に心奪われる様になったのは。
‥‥本心を隠し過剰気味に掛けられる白夜の言葉は、案の定、生真面目な宮古には冗談としか受け取られなかったが。
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